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スポーツ情報サービスシステムとは何か?

 

インターネットをはじめとする情報のボーダーレス化が急速に進み、スポーツの世界も大きく変容してきている。わが国でも、スポーツに関する様々な情報を一元化し、日本のスポーツ界全体のレベルアップを図ろうと、2000年に国立スポーツ情報センターを発足させる予定がある。スポーツ情報機関の国際組織である国際スポーツ情報協会(IASI)のネリダ・クラーク会長に、スポーツ情報の取り扱い方、サービスシステム確立の方法を講演願った。

(4月6日SSFスポーツセミナーより)

 

どのような情報サービスを提供するにしても、それが成功するためにはいくつかのキーポイントがあります。まず、提供先(クライアント)が誰であるか、顧客ベースを明確にしなければなりません。スポーツ情報に関していえば、3つのレベルの情報があります。1]スポーツ行事に関する情報、2]スポーツ科学に関する情報、3]スポーツ政策に関する情報です。これらの情報の受け手は、一般大衆はもとより、公的機関の職員、スポーツ指導員、コーチ・選手、全国スポーツ組織、ドーピングテストの当局、スポーツ科学者、スポーツ医学研究者、医師、さらに少年スポーツ、女子スポーツ、高齢者スポーツ、障害者スポーツなどのスポーツ・フォア・オールの振興に携わる関係者すべてがクライアントと考えられます。

情報センターを発足させる際には、「誰にどんな情報を流すのか」を明確にしておく必要があります。スポーツ産業が肥大化する中で、すべての人が満足できるような情報を蓄積し、提供することは不可能に近いことです。クライアントにある程度の優先順位をつけるのも止むを得ません。

次にキー・クライアントと協議した上で、最良の提供方法を決めなければなりません。たとえばオーストラリア国立スポーツ情報センターでは、スポーツ指導員から視聴覚資料が必要だという要請を受けて、映像記録の収集、ビデオの貸出しサービスを開始しました。クライアントの満足が得られなければ、それは「情報サービス」とは言えません。

 

技術と人材

 

情報サービスに携わる者は、最新技術に対して無関心ではいられません。技術は情報サービスの鍵を握るものであり、優れた技術があってこそ質の高いサービスや情報製品の供給ができます。インターネットのような媒体がかっこうの例でしょう。また、技術はサービス管理を容易にし、運営経費を削減する可能性も持ち合わせています。情報サービスは購入するのではなく、技術を通して情報にアクセスするものだと考えれば、適切な情報がタイムリーに手に入ることがクライアントの最大のメリットになります。

IASIのデータベースは、常にバイリンガル(2カ国語)で構築しています。1国の言葉で書かれたデーターベースを他国でもシェアして使うことができるからです。日本には、まだスポーツデータベースは構築されていないようですが、これら既存のデータベースに日本語でアクセスする技術を開発すれば、いたって簡単にデータベース構築が可能になります。

情報の収集・蓄積・提供というのが情報サービスに必要な機能です。昨今、スポーツ情報産業で働くことに魅力を感じる人の質やタイプは大きく変化しています。印刷物作成の技術を持っていれば良い、隔離された場所で記事だけ書いていれば良い、他の幅広いスポーツ関連産業とまったく切り離されたところで仕事をしていても良い、という時代は終わりました。今、スポーツ情報センターが求める人材は、積極的に他者と意思の疎通を図り、通信システムなどに通暁する情報のプロであり、顧客に焦点を合わせ、常に目を外に向けている人です。そして、様々な技能を積極的に培う姿勢がありながら、もしその技能を変えなければいけない時には迅速に変えることができるフレキシビリティを備えていることが必要です。

 

ネットワークこそ力

 

今日、情報サービスの分野では、孤立して運営することはできません。適切な情報を提供するためには、他の情報提供者(プロバイダー)と協力して事業を進めることが必要です。スポーツの世界では、そのような情報の枠組みがすでにできているものもあります。IASIが良い例ですが、他の業界団体と協力することも可能ですし、大学や研究所といった、幅広い情報収集に携わっている機関と協力することも可能です。オーストラリアでは、情報提供者を完全にネットワーク化し、定期的に連絡を取り合い、共同情報サービスの開発に協力してあたっています。

また、欧州SFA情報センターは、欧州各国にスポーツ情報オフィサー(SIO)を配置し、それぞれの国のスポーツ情報の収集にあたらせています。SIOからセンターに届いた情報は再処理され、ヨーロッパ共通情報として各SIOにフィードバックされます。横断的分析が行えるのもネットワークの強味です。

スポーツ情報サービスという事業分野には、多くの心躍るような傾向や動きが見られます。それは「スポーツ」と「情報」という急成長を遂げている2つの最も偉大な産業が結びついた分野であるからです。スポーツ情報サービスという分野が日本に根づくには、スポーツ産業に日々携わる人々のニーズ次第という側面もあります。しかし、世界の傾向は間違いなく、スポーツ情報サービスシステムの構築に邁進しています。日本も、そのネットワークの一員となられることを期待しています。

 

【スポーツ情報豆知議】

国際スポーツ情報協会

 

様々なスポーツ情報の提供に携わる各国の団体や研究機関が、互いの蓄積情報やノウハウを交換する目的で1960年9月に設立した。現在会員は63カ国100団体が加盟(SSFは1993年に加盟)。4年に―度の総会と、毎年開催するフォーラムやインターネットでのメーリングリストの運営などを通じて会員間の情報交換を促進している。データベースの構築や途上国への助言等の事業も進めている。国際スポーツ科学学会や国際標準化機構等と協力関係にあり、1994年IOC認可団体となる。

http://www.sirc.ca/iasi/iasi.html

 

【プロフィール】

ネリダ・クラーク氏

国際スポーツ情報協会(IASI)会長

 

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1982年オーストラリア・スポーツ研究所に入所、マルチメディア情報サービスを提供する国立スポーツ情報センターを起ち上げる。1996年ASC情報部長就任。スポーツ情報の促進技術とその応用に強い関心を抱き、オンライン・データベース"AUSPORT"の発足に貢献。2000年までに国内主要スポーツ組織を結ぶためのオンラインサービス"SPORTNET"の戦略を策定、インターネット上に"Australian Sport World Wide Web"を開設するための作業を指揮。主要著書は25冊を超え、世界各地で講演活動を行う。

 

ワールドゲームズ情報

ロン・フローリック氏来日

 

去る4月22日、国際ワールドゲームズ協会のロン・フローリック会長が来日し、東京・原宿の日本スポーツマンクラブで記者会見を行った。

約60名の報道・スポーツ団体関係者を前に、フローリック会長は挨拶の中で、秋田の施設の素晴しさを評価した上で、秋田大会の次の2005年大会から、国際オリンピック委員会(IOC)が積極的にワールドゲームズに関与してくることを示唆し、国旗掲揚や国歌斉唱、開会式の国別入場行進などについての変更の可能性を示した。

質疑応答では、国旗・国歌や国別の入場行進はIOCから出された提案か否か、また秋田大会での使用施設の数や予算についての質問があった。これに対し、フローリック会長はIOCの関与を否定した上で、秋田市・雄和町の施設が中心になること、予算は総額15億円を見込んでいるなどと答えた。

また、日本パワーリフティング協会は、2000年の世界選手権は11月に秋田で開催されることが決定したと発表。その他の各競技団体も、秋田で日本選手権クラスの大会開催を計画しているところもあり、盛り上がりが期待される。

 

クローズアップナウ

*このコーナーではスポーツ・フォア・オールの精神がキラリと光る自治体を紹介します。

 

インターネットで「スポーツ王国・ぎふ」づくり

岐阜県

財団法人岐阜県イベント・スポーツ振興事業団

スポーツ科学トレーニングセンター企画情報係 古川学

 

スポーツをしたい、見たい、クラブに入りたい、指導者が欲しい、スポーツについてもっと知りたいなど、スポーツ情報に関して県民が求める内容は多様です。またスポーツを「健康維持のため」や「ライフワーク」としてとらえる人の増加に伴い、求める量も増えています。このようなニーズに的確に応えるため、スポーツ情報の収集・整理・統合と提供窓口の一本化を行いました。

情報提供の窓口として一般的な電話での対応だけでなく、インターネットへ接続したパソコンを提供窓口として加えました。そのため、センター内にWWWサーバーを設置し、その長所を生かしたより効果的なスポーツ情報の提供を目指しました。この背景には、インターネットに接続する家庭が増えていることや、県内の公立学校・公共施設・市町村ほとんどすべてからインターネットへの接続ができるようになったことがあります。

提供する内容は、県民の皆さんからの要望が多いものを中心に、施設666件、広域型の行事・大会・講演・スポーツ教室など300件、指導者611件、団体51件、軽スポーツ44件、ライブラリー(図書、ビデオ、論文)4700件、競技記録560件で、画像を伴っています。これらはキーワード検索や、地域や種目などの項目から自由に検索ができ、必要な情報を簡単に速く提供できます。

自由に使える電子掲示板、スポーツについて情報交換ができる電子会議室、問い合わせの窓口となる電子メール、県民の意見を収集するアンケートのページなども設置し、県民間のスポーツ情報の交流または県民の要望の把握を目指しています。

また、県のスポーツ関係の施設・関連団体についてはホームページ化してその内容を詳しく載せ、県内外への情報発信機能を強化しています。スポーツイベントの中心的な会場となる「岐阜メモリアルセンター」のページでは、イベント情報や写真を多用した施設内容を載せています。

スポーツ選手のための宿泊施設「スポーツプラザ」のページでは、部屋の予約情況がわかり合宿などの申し込みがしやすくしてあります。さらに、スポーツ相談の窓口を持つ「スポーツドクター」のページや、「医科学レポート」を継続して掲載している「岐阜県体育協会」のページでは、医科学面からの情報提供をしています。そのほか、競技力の向上の拠点施設となる「スポーツ科学トレーニングセンター」、軽スポーツの普及振興の拠点「軽スポーツ研修センター」等のホームページもあります。

インターネットを用いることにより、知りたい情報が、知りたいときに、だれもがすぐに身近な場所から入手できるようになりました。しかし、県民の皆さんからの様々な問い合わせや質の高い要求のすべてには、まだ十分応える内容にはなっていません。県民の皆さんからの意見を十分に把握し、必要な情報の収集と提供を素早く行い続けること。これが、スポーツを日常生活のなかに取り入れ、明るく豊かなスポーツライフを営むことを目標とした「スポーツ王国・ぎふ」づくりに確実に役立つものと考えています。

 

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http://www.sports.smile.pref.gifu.jp

 

 

 

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