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SPORTS FOR ALL NEWS
スポーツ・フォア・オール ニュース
1998 JULY.
vol.25
わが国のスポーツ振興政策に
新たな展開
文部省体育課
スポーツサービス振興室長 鬼澤佳弘
スポーツ振興くじ制度がスタート!
わが国に「スポーツ振興くじ制度」を導入しようとする「スポーツ振興投票法」が、平成10年5月12日に成立しました。平成4年1月、円本体育協会、日本オリンピック委員会(JOC)が、スポーツ議員連盟および各党に対して導入を要請してから6年余、スポーツ振興の新たな財源確保策として構想されたスポーツ振興くじ制度が、いよいよスタートします。
スポーツ振興くじの目的は新たなスポーツ振興財源の創設にあります。
わが国のスポーツ振興予算は、様々な工夫にもかかわらず、近年、おおむね180億円で低迷しており、しかも、聖域なき財政構造改革が求められている今日、国が新たな財政支出増を大幅に行うことは、きわめて困難だという現実があります。このような状況を踏まえ、ヨーロッパや南米諸国を中心に、諸外国でスポーツ振興財源の確保策として定着している「サッカーくじ」の導入が構想されたのです。
スポーツ振興くじの仕組み
スポーツ振興くじは、「寄付+夢+知的ゲーム」という3つの要素を合わせ持つものです。Jリーグのサッカーの十数試合の結果をまとめて予想し投票します。その性格は、宝くじのように「夢」を持たせ、小口の「寄付」という性格づけをし、推理する楽しみがある「知的ゲーム」の要素が付加されています。ヨーロッパでは「半分は子どものために、半分は自分の楽しみ」として定着しているといいます。
具体的な仕組みは、今後、徐々に決まっていくことですが、スポーツ議員連盟では、次のような構想を示しています。
当選確率は、1試合ごとの投票ではないので、例えば13試合で予想した場合、すべてが合致する1等の当選確率は約160万分の1となり、また、払戻し金は最高1億円程度、払戻し割合は売上げの50%以下など、宝くじの制度に近いものを構想しています(図1参照)。
収益の配分についての考え方
スポーツ振興くじの売上げについては、次のような配分構想が示されています。まず、売上の50%を当せん払戻し金に充て、残りが経費(売上の15%程度)と収益になります。収益の配分は、法案の構想では、3分の2をスポーツ振興助成金に、3分の1を国庫納付金に充てることになっています。「スポーツ振興助成金」は、国民のスポーツニーズに対応し、あらゆるスポーツ振興事業に充てられることになっています。また、スポーツ振興に果たす地方公共同体等の役割を重視して、助成金の2分の1(つまり収益の3分の1)は、地方公共団体および地方公共団体が出資するスポーツ団体が行うスポーツ振興事業に割り振られます。
また、「国庫納付金」は、「教育支化の振興」「環境保全」「青少年の健全育成」など、国民生活に直結する緊急の行政目的を達成する「支出」に組み入れられます(図3参照)。
今後のスケジュール
法律の成立・公布を受けて、今後、文部省では、6カ月以内に関係政省令を定め、法律を施行した後、公開コンペによって、くじの売りさばきなどを委託する金融機関を決定します。そして、おおむね2年後の2000年の実施を目指し、諸準備を進めています。
これまで、スポーツ振興くじ制度に対して出された様々な意見や懸念を払拭し、広く国民に理解の得られる制度として発展・定着させることが、今後、文部省に課せられた課題と考えています。
海外での合宿や指導者の人件費、練習場所の確保など、競技力の向上には大変な費用と労力が必要ですが、その多くを企業や学校に依存しているのが日本のスポーツ界の現状です。ナショナルトレーニングセンター等、一流のサポート体制を確立しているスポーツ先進国と比べ、貧弱な体制といわざるを得ません。
スポーツ振興くじの収益金は、ナショナルトレーニングセンターや広域センターの整備など、トップアスリートをサポートするために使われる一方で、中学校区にひとつずつ誰もが参加できる地域スポーツクラブを整備するなど、トップから市民レベルまで日本のスポーツを豊かにするために役立てられます。
この制度を活かすことでスポーツ先進国と同じ条件で競争できる体制を整えていける。今、そのスター卜地点に着いた思いです。
(SSF会長 小野清子)