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SSFスポーツエイド平成10年度交付団体決定!

平成10年度SSF事業予定

「NPO法とスポーツ振興」

「民間との連携でレベルアップを!」

 

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1988 MAY.

vol.24

 

SSF世界スポーツフォトコンテスト'96入選作品

SADAYUKI SHINOHARA(JAPAN)

"Everybody"

 

NPO法とスポーツ振興

公益法人を巡る最近の動向についての一考察

文部省体育局生涯スポーツ課

企画調整係 係長 田中聡明

 

公益法人とは、一般に、民法第34条に基づいて設立される社団法人又は財団法人のことを指します。また、1]公益に関する事業を行うこと、2]営利を目的としないこと、3]主務官庁の許可を得ることなどの要件を満たしていなければなりません。公益法人は、平成8年10月1日現在で全国に2万6089法人あり、文部省所管の法人は1792法人で、そのうちスポーツ関係法人(生涯スポーツ課及が競技スポーツ課所管法人)は128法人あります。

この公益法人を巡り注目すべき最近の動向として、2つのことが挙げられます。ひとつは、いわゆるNPO法の成立による市民セクターに対する法人格の付与制度の創設、もうひとつが、平成8年9月の閣議決定による公益法人に対する指導監督の強化です。

 

NPO法とスポーツ

 

ボランティア活動などを行う民間の非営利団体に法人格を与え、その活動を支援するための特定非営利活動促進法(NPO法)は、3月19日午後の衆議院本会議で全会一致で可決、成立しました。

NPOはノン・プロフィット・オーガナイゼーション(非営利組織)の略で、営利を目的としない市民団体の総称です。これまでは、法的裏付けのない任意団体のため、登記や契約が団体名義で出来ず、海外で援助活動を行う場合は、ビザ(入国査証)取得や現地駐在などに支障を生じていました。NPOに対する法人格取得を求める声は95年の阪神・淡路大震災を契機に高まり、96年12月に議員提案として法案が提出され、約1年3カ月を経ての制度化となります。NPO法は、公布後一年以内に政令で定める日から施行されます。この法律によって設立される法人が「特定非営利活動法人」です。

対象となる活動は、12の分野に限定され(別表参照)、法人格の認証は、所轄庁(NPOの事務所がある都道府県知事、事務所が2県以上ある場合は経済企画庁長官)が行います。その際、団体の定款や役員名簿、10人以上の構成員の氏名、住所、設立趣意書、財産目録などの書類の提出が必要です。ただし、多くの市民団体から要望されていたNPOへの寄付に対する優遇税制については、課税の公平性の観点などから慎重論が強く、施行後2年以内に検討することとなっています。経済企画庁では、全国に約8万6000ある市民団体のうち、少なくとも1万団体が法人格の必要性を感じているものと推計しています。

NPO法で注目すべきことは、スポーツを対象とした活動が含まれた点です。公益法人に比べ、法人格の取得が特段に容易なことなどから、今後、任意団体として活動しているスポーツ団体の法人化が推進されることが予想されます。スポーツ振興の観点から言えば、1]現在任意団体として活動しているスポーツ団体の活性化が図られること、2]スポーツ振興の分野に国、地方公共団体、民間企業、公益法人に加えて、法人格を取得したスポーツNPOが積極的に加わることで、多様化・飛躍化が図られること、3]従来からスポーツ振興に大きな役割を果たしてきた公益法人においても、スポーツNPOと積極的に連携を図ることで、より大きな役割を果たすことが期待されること、などからNPO法の成立は望ましいものと考えられます。

一方、スポーツNPOの創設によって、両者の違いが問題となり、特に公益法人に対しては、一層の公共性が求められると予想されます。つまり、設立に関してNPOと比べてより厳格な手続きが必要であり、また各種の税制上の優遇措置が認められていることから、NPOよりも高度の公共性を有するべきだということになります。今後、公益法人として活動しているスポーツ団体は、スポーツNPOとの違いを明確にし、公共事業の拡充などに積極的に努める必要性があると言えます。

 

公益法人に対する指導監督の強化

 

平成8年9月に閣議決定され、平成9年12月に一部改正が行われた「公益法人の設立許可及び指導監督基準」は、公益法人に関する様々な問題点が指摘される中で、公益法人に対する適正な指導監督などを強力に推進するために定められたものです。同基準では、1]目的、2]事業(公益事業の総支出額に占める割合は2分の1以上、収益事業の総支出額に占める割合は2分の1以下等)3]名称、4]機関(理事のうち、同一親族・特定の企業の関係者・所管する官庁の出身者が占める割合は3分の1以下、同一の業界の関係者の占める割合は2分の1以下等)、5]財務及び会計、6]株式の保有(営利企業の株式保有等は原則禁止)、7]情報公開の促進、等について具体的な定めがなされ、本基準に適合しない公益法人は、原則として3年以内に本基準に適合するよう事業の改善等を図らなければなりません。また、今後設立が許可されるものは本基準に適合するものに限定されます。

これらのことから結論づけられるのは、今後、公益法人に対してより高度な公共性が求められてくるということです。

公益法人の「公益」の概念は必ずしも不変のものではありません。時代の推移や時々の社会情勢に伴って変化するものだと考えられます。たとえば、行政や民間企業が提供するスポーツ施設・スポーツ事業が不十分であった戦後期においては、公益法人に大きな役割が期待され、「公益」の概念は比較的広範なものだったといえます。しかしながら、行政や民間企業が多様なスポーツサービスを提供している今日においては、公益法人の「公益」の概念は限定的に捉えられる傾向にあります。顕著な例がいわゆるゴルフ場法人です。戦後期、ゴルフ場の絶対的な不足などからゴルフ場の運営に公共性が認められ、ゴルフ場を運営・管理する団体が公益法人として設立されましたが(現在は地方公共団体所管で34法人がある)、民間企業によるゴルフ場の建設・運営が進んでいる現在、もはや公共性を失っていると言わざるをえない状況にあります。

平成8年9月の閣議決定に基づく措置を講ずる猶予期間が、平11年9月までであることを勘案すると、公益法人を巡る動向はますます激しさを増すことが予想されます。公益法人として活動しているスポーツ団体においては、公益法人としての自覚とともに、第三者から疑念をもたれないよう公益事業の拡充などに一層努めることが要求されてくると言えます。今後、NPOと公益法人の両輪の活動が推進されることにより、新たなスポーツ振興の幕が上がると考えます。

 

NPO法の対象となる12の分野

 

1. 保健、医療、福祉

2. 社会教育

3. まちづくり

4. 文化、芸術、スポーツ

5. 環境保全

6. 災害援助

7. 地域安全

3. 人権、平和

9. 国際協力

10. 男女共同参画

11. 子どもの健全育成

12. 以上の活動を行う団体の運営や活動に関する連絡、助言、援助

 

 

 

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