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もちろん、ACIMリファレンスアーキテクチャは既存システムとの密接な連携も可能な開放的なものであり、真にACIMリファレンスアーキテクチャに準拠した姿とは、造船所の既存システムの機能を、ある適切なサービス単位で分割後ラッパーを付加し、そのIDLを公開して高度造船CIMの世界と連携していくというものであろう。これにより、これまでのソフトウェア資産を将来にわたり活用する道が開けると同時に、市販ソフトウェアシステム等外部の開放的な世界との連携も容易になる。しかし、そのためには、既存システムから切り出すサービスの粒度、高度造船CIMの世界で整備されるサービスとの機能分担、メンテナンス性など様々な視点からの考察に基づいた機能分割とラッパーの開発が必要であり、相応の期間と費用がかかると予想される。従って、当面はこのアダプターを利用した連携が最も早期に高度造船CIMの世界と既存システムとをつなぐ手法で、実用PMまで拡張した高度造船CIMの成果を早期に造船所に展開する方法であると考えられる。

アダプターに関する実用画から見たもう一つの意義として、企業間のデータ交換の可能性を与えるという点がある。本開発研究においては、共通化を図ったPMを介して造船所CADシステム間の情報交換による将来の企業間の設計協業を視野に入れている。企業ごとに異なっている造船所CADシステム間のデータ交換を実現する仕様としては、現在、ISOで策定中のSTEPがあり、船舶関連のアプリケーションプロトコール仕様が鋭意進められている。しかし、その実現には今しばらく時間を要する情勢であり、早期に造船所に展開することは困難である。また、STEP以外のデータ交換標準として日本造船学会で作成された部品形状や船型データに関するデータ交換仕様がある。しかし、PMに関する仕様は現時点では存在せず、この意味で、異機種CAD間の製品情報の交換を実現するアダプターの存在は、実用的側面から意義があると考えられる。

 

5.4.2 アダプターによるデータ交換のシナリオ

昨年度の開発研究において、アダプターで実現するべき機能要件を明確化するために、PMと既存CADシステムとの連携方法を検討した。検討結果を図5.4-1に示す。本図は、既存CADシステムとPMとの間を必要なタイミングで双方向にデータを交換することにより機能連携を図るというものである。もちろん、PMと既存CADの表現能力、表現方法の差が存在するので100%のデータ交換は困難であり、この意味で本図は理想的な姿と見るべきであろう。しかし、考え方としては高度造船CIMの成果を早期に造船所で適用する手法としては現実的な展開法と考えられる。このデータ交換シナリオに基づいたアダプターの機能要件は昨年度の報告書に詳しいが、ここではレビューの意味で基本要件とデータ交換シナリオの要点を再掲する。

 

 

 

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