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(4) 上記誤差のかなりの部分は、本計算で使用したモデルが熱による氷の成長・融解を考慮していないためと考えられる。従来、一週間予測程度では熱の影響は殆ど無いと言われていたが、観測でも全氷量の減少が明らかに見られており、熱の影響は大きいと思われる。熟影響は氷縁付近での密接度に対して大きく作用するため、特に北極海航路付近での予測精度向上への寄与が期待できる。なお、オホーツク海全域の流氷計算に関しては、既にDMDFモデルと熱モデルの運成計算が行われており、計算時間も殆ど増えない(%のオーダー)ことが確かめられている。

(5) 熱影響の次に上げられる誤差要因は、氷の初期速度を0にしていることと思われる。これは、モデルの問題ではなく、与えるデータの問題である。解像度の粗いSSM/Iデータでは、氷の初期速度を求めることができない。SAR等の高解像度衛星観測データの解析技術の進歩が望まれる。

(6) 熱の影響を考慮しなかった本計算でも、風による水の減退などが計算されており、その動きは与えた風や海流に対して合理的である。従って、上記改良を施せば、実用レベルに大きく近付くものと思われる。

(7) 流水の全般的な動きには風が最も影響すると言われているが、そのことが確かめられた。

(8)本研究では、時間の関係から、25km格子の広範囲計算のみを行うた。しかし本計算モデルは、風による開水面の生成など、船舶の航行に重要な現象の予測もある程度できる様にモデル化されている。今後、本研究の様な広範囲の計算と局所的な高解像度計算を組み合わせた達成計算が、期待される。連成計算による計算時間の増大には、2個以上のCPUを搭載したパラレルマシンの利用が、有効な対策となろう。

 

参考文献

Yamaguchi, H., Toyoda, M., Nakayama, H., Rheem, C.-K., Matsuzawa, T., Kato, H., Kato, K. and Adachi, M., 1997, Influence of Floe Shape on Behavior of Ice Floes around a Structure, Proc. Vol. IV 16th OMAE / 14th POAC Joint Conf., Yokohama, Japan.

鈴木慎介、松沢孝俊、1995、オホーツク海における流氷運動の数値シミュレーションに関する研究、東京大学工学部船舶海洋工学科卒業論文

長岡久史、1999、オホーツク海の氷況分布予測に関する研究、東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻修士論文

 

 

 

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