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(3)パルス管冷凍機

GM冷凍機の発明者であるGiffordとLongsworthが1964年に提案した後、20年ほど動きがなかった。1984年、旧ソ連のMikulinがバッファタンクとオリフィスを付加したパルス管冷凍機を発明し、すぐにRadebaughがヘリウムを冷媒として100Kを切り、60Kに到達した。

1990年、Zhuがダブルインレット型で41Kに達すると、それ以降、パルス管冷凍機は次々にモディファイされ、多くの発表がなされている。この間の開発経過を井上が表3.5.1に示している[17]。中には、3.65kW入力で160W at 80Kという大出力のものもあり、1段で20K、2段で3K台など様々な用途に応用できる可能性をもつ。

<パルス管冷凍機の原理>

パルス管冷凍機は、低温ガスを断熱膨張させて冷却するためのピストンなしに冷凍を得ることができるが、その理論的な裏付けはようやく1980年代の終わりになって、Swift、富永等によって熱音響工学としてまとめられてきた[13]〜[17]

松原は、パルス管冷凍機の構成を次のように説明している。図3.5.3に示すように、パルス管冷凍機は振動圧力の発生機構、蓄冷器、パルス管及び位相制御装置からなり、圧力振動発生源は図の例のようにスターリングサイクルのような圧縮ピストン、放熱器との組み合わせ、あるいは熱音響発信器などにも置き換えられる。位相制御機構は図では放熱器、オリフィス及びバッファ容器との組み合わせが用いられているが、いくつかの異なる方式がある。蓄冷器はスターリング冷凍機やGM冷凍機と同じであり、パルス管には薄肉のステンレス管が一般的である。

富永は、表3.5.1に示したパルス管冷凍機を、パルス管高温端での振動圧力と流体の変位との位相差の特徴に注目して3世代に分類した。松原は3世代の特徴を図3.5.4のように等価PV仕事で表し、第1、2、3世代と進むにしたがい、低温部でのPV膨張仕事が大きくなっていく過程、すなわち冷凍能力が増大していることを分かり易く表現している。

このように、パルス管冷凍機の研究は理論、実験の両面で急速な広がりを見せており、世界中の冷凍機研究者がパルス管冷凍機の動向に注目している。

(4)まとめ

現在、主に開発研究の対象となっている小型冷凍機として、伝導冷却型超電導磁石用GM冷凍機、宇宙用スターリング冷凍機、新たに注目されているパルス管冷凍機を紹介した。

超電導磁石を利用するシステムには信頼性の高い冷凍機が不可避であり、伝導冷却型GM冷凍機やパルス管冷凍機の今後の開発動向には注視していく必要がある。

 

 

 

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