日本財団 図書館


3.5 冷凍システムの開発状況

極低温小型冷凍機の中で、クライオポンプ用GM冷凍機のみが、唯一、安定した国内市場を持つ商品として実用化されている。しかし、研究開発レベルでは、MRI、NMRの冷却を対象としたGM4K冷凍機、宇宙用スターリング冷凍機、浮上式鉄道用8W級GMJT冷凍機および10W級スターリング冷凍機、近年急速に到達温度・冷凍能力ともに向上し注目されているパルス管冷凍機、その他磁気冷凍機、吸収式冷凍機など、研究対象は非常に広くなってきている。ここでは、将来の超電導電磁推進船に適する冷凍機として、主な極低温小型冷凍機の開発情況について、文献をもとに紹介する。

(1)GM4K冷凍機

液体ヘリウムを必要としない伝導冷却型超電導磁石が商品化された理由の一つとして、4Kレベルで大きな比熱を有する磁性蓄冷材が開発され、JTループのいらないGM冷凍機のみで4K冷凍が可能となったことが挙げられる(図3.5.1)[1]〜[3]

これまで、GM冷凍機の到達温度および冷凍能力の向上とともに、運転温度、発生磁界強度等の達成レベルが上がり、現在では10T以上の高磁場を発生できる研究用マグネットなどが液体ヘリウムがいらない伝導冷却型超電導磁石として実現している[4]〜[8]

もっとも、臨界温度の高いHTS線材を使用した伝導冷却型超電導磁石は通常のGM冷凍機による冷却が可能であり、長谷らはBi2212線材による1Tマグネットを20Kでの冷凍能力8W(到達温度約10K)の冷凍機で、加藤らは4T超電導磁石を開発している[9]〜[10]

以上、伝導冷却型超電導磁石の実績は多くあり、そのシステムは冷却対象が鞍型コイルとしても冷凍負荷容量さえ満たせば問題ないと考える。

(2)スターリング冷凍機

宇宙用として、耐用年数5〜10年を目標とした小型冷凍機としてはスターリング冷凍機が研究対象となっている。これは数W at 4Kの冷凍機としては振動等の弱点からGM冷凍機に遅れをとっているが、1980年代にオックスフォード大学Daveyらが開発した非接触電磁共振型往復動機構(図3.5.2)の採用により、飛躍的に駆動機構の寿命を延ばすことが可能になったためである[11]。その後、ほとんどの冷凍機メーカが、超小型スターリング冷凍機やパルス管冷凍機の圧縮部および膨張部の往復動機構として採用し、小型化や耐久性を競っている。逆に、GM冷凍機はロータリ弁やディスプレーサの摺動部である常温シールの耐久性が1〜2年であり、熱効率も低い理由で宇宙用としてはあまり注目されていない[12]〜[13]

このように、スターリング冷凍機は超小型領域での開発が多く、そのまま超電導電磁推進船用として採用するには、冷凍能力の面で不足しているようだ。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION