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(4)固体

固体絶縁材料として、各種の高分子材料が用いられている。こうした材料における絶縁破壊の強さの温度依存性については図3.3.39のようになる。高分子材料の絶縁破壊の強さは、室温に比較して極低温では高くなる傾向にあり、液体窒素温度と液体ヘリウム温度での絶縁破壊の強さはほとんど変わらない。ただし、これらの高い絶縁破壊強度は、電極周囲媒体での放電を完全に防止した場合の値で、放電を伴うような絶縁破壊の場合には、絶縁破壊強度はかなり低下する[3]

(5)複合体

液体ヘリウムや液体窒素などの液体冷媒と高分子フィルムとの複合である固体-液体複合系と、各種の高強度繊維にエポキシなどのプラスチックを含浸、固化したFRPなどの固体-固体複合系があげられる。

固体-液体複合系の場合、超電導線に高分子フィルムや合成紙を巻き、液体ヘリウムや液体窒素中に含浸するような方法では、テープの重なり目あるいは突き合わせ部に隙間が残り、液体の絶縁破壊の強さは固体に比較して低いことから、液体中での部分放電が発生し、それにより高分子材料が劣化して絶縁破壊に至る(図3.3.40)[3]

固体-固体複合系のFRPなどは、電気絶縁スペーサーとしての役割とともに、超電導コイルなどの支持材料のように構造材としての役割を果たすことが多く、大型の超電導マグネットでは絶縁材料にも大きな機械的応力が加わるため、機械的な応力が加えられた状態での絶縁破壊特性(図3.3.41)や、機械的な欠陥が導入された場合の絶縁破壊特性の劣化などの検討が重要である[1]

近年製作された超電導マグネットの構成を見ても、冷媒としては液体ヘリウムもしくは液体窒素、固体絶縁材料としては高分子材料、FRP、超電導線の被覆に関してもエナメル被覆構造であり、絶縁構成に関しては新しい材料の使用、特性の大幅な向上などと言った報告は見られない。超電導機器における電気絶縁に関わる真空、液体ヘリウム、液体窒素、高分子材料、FRPなどの極低温下における絶縁破壊特性については上記したように、古くから研究されている。また、超電導マグネットでは、正常な動作時には電気絶縁上ほとんど問題となる電圧ではないが、超電導状態が崩れてクエンチが生じると、超電導マグネットに蓄積されていたエネルギーの放出にともなう端子電圧の急激な上昇や、発熱による冷媒の蒸発による周囲環境の変化などが発生し、絶縁破壊につながる可能性がある[1]

こうした現状において、超電導コイルの絶縁技術に関する最近の動向を見ていくと、超電導機器の設計に役立つように、実際の超電導機器の状態に即した形での試験や、今までに製作された超電導機器に関する絶縁破壊事例の調査などが行われている。最近発表された文献から、超伝導応用電力機器の実用絶縁設計に直接的に役立つ面積効果・体積効果の最近の実験・解析結果ならびにクエンチによる動的絶縁破壊特性などを紹介する。

 

 

 

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