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2 形技能とその練習法

 

(1) 順番をおぼえる

まずは、形を「はじめ」「なか」「おわり」のように、全体を分けて順序をおぼえさせる。指導者も示範して見せ、模倣できるようにするのも良い。わかりにくかったら、もっと細かく分けてもよい。そのまとまりを徐々に大きくして、最後には、全体を通してできるようにする。

 

(2) 技の意味を理解する

順序をおぼえたら、どんな技に対してその動作を行っているのか、つまり形の中で使われている技の意味を理解しなければならない。形技能は、基本的に1人で行うものであるが、組手技能のように相手をおいて、実際の技の攻防をさせながら指導すると技の意味の理解がしやすい。形の分解とも呼ばれるが、いろいろな解釈のしかたがあるので、児童自身に考えさせるのもよい。

 

(3) 繰り返し練習するために

形を習熟させるためには、繰り返して練習することが求められる。しかし、単に繰り返すだけでは苦しく、鍛練的要素が強くなり、身体的に悪影響が予想される。また、精神的にもやらされている状態になってしまう。

そこで、練習方法に変化を持たせることが必要である。練習方法は、ちょっとした視点の変化で可能であるが、その一例を示す。

1]いつも、板の目に沿って形の練習をしていると思うが、それを無視する。つまり、道場や体育館を斜めに使い、形の演武をする。それでも演武線を守り、正しい動き方ができるかどうか。形の演武をする際に、少なくとも板目などをガイドにしていると思われるが、ガイドがなくなると身体運動に集中し、体の動かし方などを純粋なかたちで習得することができる。

2]普段行っている形を、逆方向から演武する。左方向から始める形は、右方向から始めるのである。普通に演武する形でも左右対称の動きは多いが、回転の方向など、多少ではあるが偏りがある。両方の動きができれば、バランスや身体コントロールの向上が期待できる。この練習方法は、古くから行われているが、神経系の発達にも効果的であると思われる。

3]形の演武を目をつむったままで行う。視覚による情報を遮断することによって自らの身体感覚、運動感覚だけで動作を行わなければならない。1]で行った板の目というガイドをなくすだけでも動作が不正確になると思われるが、閉眼であればより負荷も高く、形を演武すること自体難しくなるのは容易に考えられる。これを高度な形で行わせるのではなく、初歩的な基本の形で行わせる。道場を斜めに使う練習以上に、自らの身体に注目せざるを得なくなるため、身体感覚などの向上が期待できる。

 

 

 

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