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結核菌の分離培養から、同定、核酸増幅法、耐性遺伝子の検出について、最近の進歩を概説した。

分離培養では、液体培地が主軸となり、Septi-Check AFB、BACTEC、MGIT、MB/BacT Microbial detection system、MB/REDOXなどを、同定法ではBACTEC NAP、DNA probetest、Immunochromatography using anti-MPB64 monoclonal antibodyなどが紹介された。

耐性検査では、RFPの場合にはrpoB遺伝子で耐性例の94%、PZAではpncAで97%、キフロン剤ではgyrAで80%が検出できるが、他の薬剤の耐性検出は今後の課題であることが紹介された。

 

6. 結核とHIV Charoen Chuchottaworn (Thailand)

タイの結核患者のエイズ陽性率は、チェンマイでは1989年に5.4%、1995年に45.7%、1996年には34.0%と上昇し、バンコクでは同じ時期に24.O%、20.0%、21.3%であり、ヤラでは0、12.1%、17.1%、チェンライでは1.5%から1995年には45.5%まで上昇した。

疫学的にはエイズは結核の発病を増加させる。この傾向は病院や監獄で強く見られている。タイのエイズ感染者は2000年には100万人に達し、その大半が20〜40歳代で、結核の既感染者は20%と推定されるので、結核とエイズの重感染者が20万人と推定される。その10%が毎年発病するなら、毎年2万人の発生の増加があると考えられる。結核患者ではTNF産生が刺激され、CD4リンパ球数が減少する。日和見感染が増加するが、日和見感染を起こした者のCD4リンパ球数を見ると、エイズ感染者では200人以下が55%、200〜500が35%、500以上が10%であり、エイズ未感染者では200〜500が31%、500以上が69%であった。エイズ感染者の結核では死亡率が上昇し、薬剤耐性も獲得しやすくなる。

胸部X線では空洞が少なく、肺門や縦隔リンパ節の腫脹を示す者が多い。塗抹陽性患者の割合は、CD4リンパ球数が201〜300の時が、それよりも多い場合、少ない場合に比べて低い。

化学療法の成績は、臨床的な治療研究の場合には治癒率が90%に達するが、日常の治療では50%以下となる。抗結核薬への副作用は、タイでは5〜18%に見られ、エイズ感染者の5%未満に比し高い。死因はカンジダ症、胸郭内リンパ節腫脹、粟粒結核などである。

今後の課題は、患者の治療への協力をいかにして良くするか、死亡率を低くするための諸方策(早期発見、治療の変更、新薬の開発、抗ウィルス剤の副作用など)多剤耐性結核にどう対処するか、予防投薬が可能かどうかなどである。

 

7. DOTS戦略 Sergio Spinaci (WHO)

DOTS戦略を構成する政治的な公約、有症状者に対する顕微鏡検査による診断、直接監視下の短期化学療法抗結核薬供給体制の整備、厳格な監視体制の整備の各項目を説明。

政府の公約には、予算措置、職員の確保が含まれるべきであり、中央には専門組織が必要。

 

 

 

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