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1] 一九九七年十一月二六日の新聞投書欄を見てみよう。京都市在住の八〇歳の年金生活者の方からのものだが、その母親が大腿骨を骨折し手術したが歩行不能となった。しかしご本人は気丈でリハビリ希望、そこで「特別養護老人ホーム」入所を申し込んだが、待機者が三〇〇人いるので、入所は早くて三、四年後と申し渡され、途方に暮れているとの「老人のための施設整備急げ」と題する投書がある(朝日新聞・関西版)。

2] 介護保険制度が衆議院で論議されていた一九九七年の春、長野県で痴呆症の七八歳の妻を介護していた八七歳の男性が妻を絞殺し、橋の欄干で縊死した。男性は、介護教室に通いながら慣れない介護を続けてきたが、ついに力尽きたという。

3] 一九九八年今年の一月八日の早朝、広島県呉市で六八歳の男性が自宅の寝室で介護していた六七歳の妻をヒモで絞め殺した。妻は二年前から寝たきり状態になり、水道工事をしていた夫が半年前から仕事をやめて妻を介護していた(中国新聞)。

4] 同じく一月八日朝、秋田県能代市で、六九歳の女性が、介護していた老人性痴呆症の七一歳の男性をひもで首を締めた後、農薬を飲んで自殺を図った。同居していた長男が救急車で運んだが、夫は意識を取り戻し、妻は中毒死した。(読売新聞)。

5] 同じく一月二一日、兵庫県尼崎市の阪神大震災用の仮設住宅で、老衰し痴呆症状も出ていた八七歳の父親を、介護していた息子(五〇歳)が風呂場で絞殺した。警察の調べでは介護の疲れから発作的に殺したのではないかとみている。

5]の例について付言すると、近所の人々は父親の体調が悪くなるたびに仕事を辞めては介護に専念していたこの息子の親孝行ぶりを力説している。息子は自宅を訪れる市の生活アドバイザーには「介護がしんどい、つい酒の量も多くなるんや」とこぼしていた。市側は特別養護老人ホーム入所やショートスティ通所も勧めていたが、本人も父親も辞退し、週に一、二回のデイサービスの利用にとどまっていた。しかし市の関係者は「相談しやすいアドバイザーに

 

 

 

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