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3番目に、観光地としてお客様にたくさん来ていただくことのメリット、デメリットも討論されました。地元住民にとって今まで便利だったものが不便になる可能性。本当に観光地化し集客交流人口を増やすことがいいのか、という意見もございました。

こういったお話を聞きながら、私が思ったのは、「本物とは何なのか」ということです。一時の流行やトレンドに流されることなく地道に、しかも長期的に息長く続いていくことが、地域においては重要なんだろうなと思いました。

○井戸

ありがとうございました。

滋賀県の観光を考える上で一つだけご紹介したいのは、私が今、勤務している滋賀医大の新入生諸君に、秋になると「滋賀の印象」というテーマで授業の30分ほどを割いて書かせている文章があります。80%余りが京阪神の出身で滋賀県出身の学生は大変少ないのですが、代表的なものを二、三、紹介させていただきます。

学生A「滋賀県は京都の陰に隠れていて目立たない平凡な県である。先日の新聞で比叡山、延暦寺が大津市にあることを初めて知った」

学生B「郷里は福井だが、滋賀県は東京へ行く時も、京都、大阪へ行く時もいつも電車でよく通ったが、これまでゆっくり訪ねたことがなかった。滋賀県は通過県である」

学生C「近江商人で知られる滋賀県だが、大津、草津にファッションの店やしゃれたレストラン、大きな書店が少なく、ディスコもない。どう見ても田舎である」

学生D(京都在住の女子学生)「滋賀県は琵琶湖や比良、伊吹の山並みなどすばらしい自然に恵まれている。それに普通の田舎に立派なお寺やローカル色豊かなお祭がある。でもこれまで派手に宣伝されなかった。滋賀県は控えめで清楚な素顔美人である」

なかなか見るところをよく見てくれていると思います。

旅行というのはやはり泊まらないとだめだと思います。学生諸君が歴史地理研究会をつくっており、毎年10人ほど一緒に旅行します。共済関係の安いホテルに泊まる。座棺のような窮屈なお風呂が嫌いで、いつも「おい、みんなで風呂屋へ行こう」と、町の銭湯に早めに行く。地元のおばさん、おじさん方がおられ、地元の言葉が聞ける。「今晩、どこでごはんをたべたらええやろ」とか、いろいろな話が出る。おっちゃん方も自慢話をしてくれる。なにか違う土地へ来たなあという感じがわいてきます。

先ほどから「暮らし」という言葉が出ていますが、やはり地元の皆さんの暮らしにどこかで触れ合えることができる、これが旅の楽しみの一つでもあると思います。本日はありがとうございました。

 

 

 

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