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パネルディスカッション

コーディネーター 井戸庄三(滋賀医科大学 教授)

パネリスト 広野敏生(まちづくりプロデュサー・株式会社創造工房ダ・ピンチ代表取締役)

前田弘(阪南大学国際コミュニケーション学部 講師)

高崎邦子(JTB日本交通公社 関西営業本部 広報課長)

 

○井戸

今日は、「湖国の魅力をどうお伝えしていますか?」という、大変アトラクティブなキャッチフレーズをつくっていただき、観光専門の3人の先生方を県外からお迎えしております。湖国滋賀県の魅力を、客観的な視点で捉えていただき、新たな魅力の発見や、アピールの仕方などの勉強をさせていただこうと思っています。

○広野

私は医者として、内分泌内科で、環境によってホルモンがどう変化するかというようなことを研究していたのですが、やればやるほど、人間の体というのは随分周りの環境に影響されるということがわかってきました。

いろんな町に寄せさせていただくたびに、ついつい町の元気度を診察してしまいます。元気のない、さびれている町というのを診ていくと、どんな素晴らしい資産があっても、人は集まってきません。だから、今日私は、どうすれば町が元気になるのかという観点でまちづくりを見直す必要性をご理解いただきたいと思っています。

もう一つは、まちづくりにおける大都市志向あるいは画一化について言及したいと思います。観光の一つのキーワードは「違い」だと言えるでしょう。「違う」ということを明確に見せていくこと、「違い」に自信を持っていくことが観光というものの中で大切なことではないかと考えているのです。

○前田

私が文化人類学者として研究していた伝統社会というのは、もともと観光とは相入れないものです。ところが今、伝統社会というのはまさに観光資源そのものになり得るものでもあります。

私は熊本大学で研究をしていたことがあるのですが、熊本県には94市町村のうち54町村が過疎です。農林水産業が非常に衰退していて、どうやって生き延びるかというのが大きな課題でした。そこでは観光は観光客と観光業だけのものではなく、むしろ観光客を嫌っていた農林水産業の人たちが一緒に加わって、村全体の業として観光をつくっています。そういう意味で、私は、観光でない部分も観光になりつつあるのだという意識を非常に強く受けました。

ところが、ここで滋賀県の観光の様子を見ると、私が熊本で体験したものと全く違った豊かさがあるので、ちょっと驚いています。その驚きも含めて、滋賀県の観光というものを考えていきたいと思います。

 

 

 

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