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まえがき

 

国際民間航空機関(ICAO)において、今後増大する航空交通需要に対応するため、従来の地上施設を基本とした航空保安システムに代え、衛星を活用した航空保安システムの導入が提案され、全世界の締約国の支持を得たことを受け、各国でこの次世代の航空保安システムの開発整備が活発に進められている。我が国でも、この構想を受け、運輸多目的衛星(MTSAT: Multi-functional Transport Satellite)を独自に打ち上げ、これを活用した新たな航空保安システムの構築を積極的に進めている。

次世代の航空保安システムでは、航法の分野において、米国のGPSやロシアのGLONASSに代表される全地球的衛星航法システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)を利用することとしている。このシステムでは、核となるGPSやGLONASSの完全性、精度、利用可能性を補強し、民間航空の航法に使用するための要件に適合させる補強システムを導入することが、GNSSを安全で効果的に利用するため、必要不可欠となっている。我が国においても、MTSATを活用し、広域にGPSの性能を補強するシステムである運輸多目的衛星用衛星航法補強システム(MSAS: MTSAT Satellite-Based Augmentation System)の整備が進められている。

MSASと同等な補強システムが米国及び欧州で開発中であるが、これらシステムの根幹となる国際技術標準は、現在、未だICAOの専門家パネルで検討作成中であり、各システムの開発には、既に米国で作成されていた補強システム用受信機の技術基準が、事実上の国際標準として使用されている。この意味で、同機上受信機を開発することは、単に実際の機器開発を行うだけではなく、受信機の技術基準の妥当性を検証し、また、現在、整備中のMSAS等補強システムの性能を確認することもできるなど、大変に意義深いことである。

このような状況から、航空振興財団は運輸省航空局の要請に基づき、日本財団の補助を受け、「GPS補強システム用機上受信機の開発」委員会を平成9年度に設置し、開発研究を開始した。

平成10年度には、平成9年度に行われた調査及び基本設計に基づき、評価用受信機のハードウェア及びソフトウェアの製造を完了し、地上評価試験を実施したところであり、本報告書はその検討調査内容をとりまとめたものである。本年8月にはMTSATの打ち上げが計画され、その後、MSASの試験電波の発射も予定されるなか、今後、飛行試験を含め、引き続き開発された受信機の評価を進めていくことが必要である。

 

平成11年3月

(財)航空振興財団

GPS補強システム用機上受信機の開発委員会

委員長 東田實

 

 

 

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