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3)州間の通信販売

現在、州が利用税の徴収に際して最も困っている問題の一つが州際通信販売と直接販売である。利用税の徴収は州内の小売販売業者が州外の販売業者との競争において不利になるのを防ぐのに重要な手段である。州外の販売業者は州内の顧客との契約が郵便と普通の運送業者を利用する場合に限り、州の利用税の徴収を義務づけられない。

1992年のQuill Corp.対ノースダコタ州裁判において連邦最高裁はNational Bellas Hess対イリノイ州裁判(1967年)における連邦最高裁判決を踏襲し、通信販売会社は郵便、普通の運送業者によるコミュニケーション以上の接触がない場合、利用税徴収の義務を課せられないという判断を示している。したがってカタログによる注文や郵便や普通の輸送業者を利用した商品の配送だけでは利用税徴収の義務は生じないことになる。しかし、Quill裁判において、最高裁は合衆国憲法の正当な法手続条項(Due Process clause of the U.S.Constitution)が州がそのような販売者に課税権を行使することを妨げるものではないという判断を示し、かつ、議会に直接販売者に州利用税の徴収を求める権限があることを明確にした。

前述のように通信販売に係る利用税の税収ロスは年間30億ドル(ACIRの推計)にも及ぶが、こうした抜け穴を塞ぐために州サイドで実施されている方法には以下のようなものがある。

a. 州内への商品移入に関する恒常的な情報交換の相互協定を締結し、消費者からの利用税の直接徴収を容易にする。

b. 個人所得税の減免によって個人顧客からの利用税の自発的納税を促進する。(現在、多くの州でこの手法が採用されているが、例えばメイン州では納税者が利用税納付額を申告するか、州がAGIの0.04%で概算減免するかの選択制がとられている。)

c. 利用税徴収に関する自発的協定を直接市販業者と結ぶ。

他方、この問題に関する連邦サイドの動きとしては、連邦議会において下院議員J.Brooks(民主党・テキサス選出)らを中心に、州政府が直接市販業者に対して州内に移入された商品に関する利用税の徴税についての権限を付与しようという動きがいくつかみられ、1989年には法案提出もなされている。直接市販業者の業界からは大きな抵抗があったため、法制定には至らなかったものの、1992年のQuill Corp.裁判の最高裁判決がこの領域での連邦議会の権限が明確にしたこともあり、同様の提案がその後も議会においてなされている。

2]個人所得税

1)フリンジ・ベネフィットの増大

アメリカでも労働者に対する報酬支払い形態においてフリンジ・ベネフィットや、その他の非貨幣的給付が増えてきている。例えば、社会保険や年金、医療保険の保険料の雇用主負担が被用者に対する報酬総額に占める割合は、1960年には8%にすぎなかったが、1991年には5,800億ドルで約17%にまで上昇している。こうしたフリンジ・ベネフィット等は連邦所得税を課税されないが、個人所得税を課税している州のうち37州では連邦所得税の課税ベースがそのまま(州個人所得税の課税ベースとして)利用されており、したがって、州個人所得税も課税されないことになる。大統領府行政管理予算局(OMB)によれば、年金保険料の雇用主負担分の連邦税収ロスは1992年で510億ドル、医療保険料の雇用主負担分が420億ドルと推計されているが、フリンジ・ベネフィットの増大は無論、州レベルでも税収を侵食し、また、税収弾力性を低下させている。さらにフリンジ・ベネフィットの非課税によって州個人所得税の公平性が損われている。

 

 

 

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