日本財団 図書館


2)非課税物品に対する売上税の課税

州政府は家計用の生活必需品や食料品などを売上税の非課税品目とし、低所得世帯への影響を緩和する措置を講じてきたが、他方それは売上税の課税ベースを狭めることとなっている。現在、26州が食料品を、6州が衣料の一部又は全部を、そして、44州が処方薬を非課税としている。さらに、住宅用のガス、電気を非課税にしている州が26、一般市販薬を非課税とする州が7州ある。

こうした非課税措置は課税ベースを縮小し、税収の伸び率を引き下げ、税収の不安定性を増すことになる。家庭用の食料品非課税は特に売上税収や税率に影響を及ぼす。1992年の調査結果によれば、家庭用食料品を非課税とする22州の税収減収額は徴収税額の16.5%にも達するという。これらの州ではこうしたイロージョンがあるが故に平均して1%ポイント高めの税率を設定せざるをえなくなっている。

家庭用食料品に対する非課税措置は低所得層に恩恵をもたらす。しかし、低所得層への負担軽減措置はフード・スタンプによる購入への売上税課税を禁ずる連邦規定によっても講じられている。(現在、フード・スタンプ支給世帯は全世帯の10%を超える。)家庭用食料品そのものを非課税にしたのでは、低所得層にその受益を特定化できないし、また、中高所得層に対しても金額べースでは大きな恩恵が及ぶことになる。例えば、データは少し古いが、コネチカット州のKPMG Economic Policy Group[1991]が行った調査によれば、同州の食料費・衣料の非課税は1世帯当たり500ドルの減税を行ったのと同じ効果を有するが、その減税効果のわずか4.6%が低所得層によって享受されているにすぎないという。注10

こうしたことからハワイ、アイダホ、カンザス、ニューメキシコ、サウスダコタ、バーモント、ワイオミングの7州は現在、負担軽減の恩恵を受ける所得層を絞りこむため、非課税ではなく税額控除を利用している。これらの措置は州所得税における税額控除、ないし独立した還付金制度として運用され、低所得世帯に食料品、生活必需品に対して支払われた売上税の負担を軽減しようというものである。税額控除方式は州税収の安定性を高め、負担軽減の対象を特定化し、軽減措置のもたらす税収効果も少ない。

他方、税額控除方式の欠点として、売上税の支払いと税額控除が機能するタイム・ラグが存在し、負担軽減効果の有効性の面で、即効性のある非課税方式に劣るということが指摘されている。さらに、税額控除方式は納税者にとって理解が難しく、また、レシートなど売上税の支払い証憑書類を保存しておかねばならいなど手間もかかり、制度の利用率が低くなる恐れもある。

州政府は生活必需品の枠を越えて非課税の対象を広げてきた。それは民間非営利団体や政府といった購入者のタイプによるものもあれば、農業用器具や教科書といった購入品目によるものまでさまざまである。個々の非課税措置はそれぞれ意義をもっているとはいえ、それらが累積することで課税ベースの大きなイロージョンが生ずることになる。また、非課税措置は特定の購入者を他の購入者より、特定の商品購入を他の商品購入より有利にすることで、課税における公平性の問題を起こす。こうしたことから多くの州が租税経費(tax expenditures)との関連で非課税の存続意義を再検討し、定期的な見直しを行っている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION