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(2) 我が国におけるこれまでの公共投資手法との比較

 

行政主体が自己財源によって直轄事業を行うという従来の公共投資の手法については、民間が行い得ないサービスの提供が可能であること、あるいは民間事業と比べて、社会経済情勢の変動を受けにくく、事業の確実性が高いことなどのメリットが認められる一方で、財源の制約から、必ずしも十分な額を確保できない場合があること、事業運営が硬直的なものとなりやすいこと、あるいは事業の実施に長時間を要することなどのデメリットが指摘されてきた。

このような指摘を受けて、昭和60年代以降、行政主体のもつ公共性・計画性などを活かしつつ民間のノウハウ・資金を活用して事業を行うという、いわゆる「民間活力の導入」が叫ばれるようになっていった。

公共事業における民間活力の導入については、これまでも、民活法等において、第3セクター方式を活用した事業方式などが実施されているところであるが、今回のPFI方式とこれまで行われてきた民活事業としての第3セクター方式との比較を試みることとする。

まず、事業の性格であるが、従来の民活事業においては、公共性の高い事業を対象としていたのに対し、PFIでは公共事業そのものを対象としている点で異なっている。また、事業実施に伴うリスク負担については、PFI方式においては、事前に契約で明確化し、予想されるリスクを事業者に移転することとなっているが、第3セクター方式は、官民の責任分担が事前に明確でなくても事業ができてしまうということが指摘されている。更に、事業経営の透明性については、PFIの場合は、契約を予め結んでおくことから、法人によっては経営の不透明性を指摘される第3セクター方式に比べて、透明性・公平性に優れたものとなることがあるといえる。

事業が行き詰まっている例が指摘される第3セクター方式による事業については、官民の責任分担が不明確であるとの指摘があるが、第3セクター方式自体が、官民のリスク負担を不明確にするわけではなく、第3セクターに出資する各事業主体がリスク負担を明確にしない事業運営を行いやすい環境を作り出すということだけなのものかもしれない。

いずれにしても、官民による公共投資を考えた場合に、官民の役割を当初から明らかにしておくべきことはどの方式を採用する場合においても当然であって、PFI方式を採用すれば、民間とのリスク分担について、事前の検討を行いやすい環境を提供するということである可能性も指摘できる。また、重要な点であるが、PFI方式自体がリスク負担に関する合意の形成を促進してくれる訳ではなく、これまで以上に、公共投資に際しての行政のアカウンタビリティーが重要となってくる点にも留意しておく必要がある。

 

 

 

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