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3 PFI(Private Finance Initiative)について

 

これまで述べてきたとおり、国・地方公共団体においては、今後、厳しい財政事情の下で、一層効率的な公共事業の推進を求められており、財政再建のための公共支出削減と社会資本整備の両立のために民間企業の技術・資金導入が不可欠となっている。これまで、民間活力の導入との観点からは、民活法による第3セクター方式などが採用されてきたが、近年、これまで公共が専ら対応していた社会資本整備の分野に、民間セクターのリスク負担の下で、民間の資金、ノウハウの導入を図る新しい手法の一つとして、PFIが注目されるようになってきた。

PFIの理念は、リスクと資金分担を民間に移転するというものであり、基本となる考え方が、「バリュー・フォー・マネー(VFM)」であり、このVFMとは、「支出に対して最も価値の高いサービスを受け取る」という考え方である。これを行政主体の立場から言うと、行政・民間を問わず、同質のサービスの提供に係る費用の総額を最も安価に提供できる主体に任せるということになろう。

我が国においても、PFIの導入について、国会や関係各省庁で検討が重ねられており、日本版PFI法案も検討されているところである。以下、英国におけるPFIの推進状況を概観した上で、我が国におけるPFIの検討状況を述べることとする(別添の講演録を参照のこと)。

 

(1) 英国におけるPFI

 

英国でPFIが議論されるようになったのはサッチャー政権における行財政改革の一環としてである。サッチャー政権は、「小さな政府」を目標に、公共サービスの外部委託化や国営企業の民営化、行政機関のエージェンシー化などを積極的に進めてきた。その結果、メージャー政権下の92年において、正式に、VFMの考え方に基づき、今後の公共事業は、サービスの購入者にその負担を転嫁していく方針が明らかにされた。その後の労働党政権においても、PFI方式による公共事業は、金額・分野ともに拡大を続け、98年度予算では、3.6兆円の公共投資に比して0.7兆円がPFI方式で実施されており、その割合は現在でも拡大傾向にある。

英国で実施されているPFIの方式は、大きく言って3タイプに区分できる。まず、独立採算タイプと言われるタイプは、公共主体の財政支出を伴わないものであり、政府による事業認可を受けて、民間事業者が施設を整備・運営して、一般の利用者から料金を直接回収するというタイプである。橋の設置や鉄道事業などがこれに当てはまる。

次に、公共がサービスを購入するタイプであるが、これは、民間事業者が公共施設を整備・運営して、行政主体からその利用料金を回収するというタイプである。庁舎の管理や病院、一般道路(通過台数等に応じて公共主体が料金を支出)や刑務所などがこれに当てはまる。英国においては、このタイプによるPFI事業がもっとも多く行われている。

次に、ジョイントベンチャータイプであるが、これは、民間事業者がプロジェクトカンパニーを設立して公的主体と契約を結び、金融機関から資金調達を行って施設を整備して、一般の利用者から料金を回収するというタイプである。この方式は、これまで我が国において行われてきた第3セクター方式に近いものであるが、第3セクター方式とは、公共主体が出資を行わないという点と、事業の実施に伴うリスクを、他のタイプと同じく事前に決定しておくという点で異なっている。

 

 

 

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