日本財団 図書館


実際の場合はもちろん、予測結果の数がはるかに多く、その確率もそれほど明確に指定されない。それでも確率に関する判定は必要である。下に説明するような感応度分析を利用すれば、通常こうした判定をかなりうまく実施できる。

 

8. リスク分析では、特定の個人に重大な影響を及ぼす結果の変数に関しては、少なくとも質的分析を導入すべきである。その一例としては、計画上の支障が家屋と土地の価額に及ぼす影響がある。もう一つの例は、不確実な便益が少数の世帯に集中するような下水道計画である。さらに、道路工事のせいで旅行が延期になるかどうかといった不確実性もある。いずれの場合でも、変数がかなりのコストをもたらしかねない。各個人は、保証ずみの結果やはるかに確実な結果を予測できれば、それと引き替えにかなり低い期待便益でも受け入れるものである。また逆に、確実な結果を予測できなければ、それを補うためにより高い期待便益を求める。事前評価では、こうした点も考慮に入れるべきである。

 

9. たとえば課税率や公共借入金のわずかな引き上げや引き下げ調整などによる、非常に広い範囲に渡る変数は、まったく影響を及ぼさないが、費用や便益が所得と相関関係がある場合は別である4。ほとんどの公共プロジェクトでは、通常こうした影響は小さい5

 

10. 変数の限界コストも考慮に入れるべきである。予測結果とその関連キャッシュフローの変動範囲が広いプロジェクトの中でも、特に固定予算が大部分を占める場合にはその管理も計画作成もやりにくくなることがある。そうした余分の管理費は、通常プロジェクト費に算入されない。そのため、そうした管理費は、もっと確定的なものとなるなら予算に投入可能と思われる場合よりも高い期待正味現在価値(NPV)を求めても構わないであろう。

 

11. プロジェクトの実施後、重要な投資の機会や選択された資源の利用が締め出される場合は、非可逆性も考慮に入れる必要がある。非可逆性の例としては、自然環境や歴史的建造物の破壊がある。

 

12. 非可逆性は、しばしば「選択価値」(人々が享受したい時に享受できるように存在していることを知っている価値)や「存在価値」(人々が実際に利用するつもりはなくても、常に存在していることを知っている価値)という面から人々が評価している施設に関連がある。そうした価値は、時には非常に重要であるが、計量化しにくいものである。

 

リスクの明確化と計量化

13. プロジェクトの各種選択肢に対するリスクと不確実性の程度は、リスク・マトリックス(添付資料を参照されたい)を使用すれば、判別かつ明確化でき、場合によっては計量化と価値評価も行える。プロジェクトの結果に関するリスクと不確実性の組み合わせの影響は、感応度分析により分析できる。

 

4 所得に応じて確実に変動する価値を有する費用や便益の金銭的期待価値は、所得に応じて乱高下するか、一定しているか、逆比例する変動値を示す費用や便益の同一金銭的期待価値に比べ価値が低い。これは、少なくとも限界所得が関係している場合の方が、価値が高くなるからである。

5 こうした影響を計量化する技術的表記法については、別添Gの添付資料の第6項で述べる。実用的な方法としては、費用や便益の価値が所得に比例するものよりも大きく変動する場合には、高い所得結果と低い所得結果の平均よりも所得に関する中心的な条件設定の方に重点を置くべきである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION