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4. 本指針では、予測結果において事態が悪化する可能性を十分見越していないというリスクを、楽観主義という用語で表わしている。費用と便益に対する楽観的見通しは、新事業や新技術の計画案にごく一般的に認められる。

 

5. 期待結果を基準とした各種予測結果の広がりを示す場合には、変数が使用される。いかなるプロジェクトも広範な予測結果を示すが、他のプロジェクトに比べ予測結果の範囲がはるかに広いものや(たとえば新技術採用の場合)、変数がはるかに大きな意味を持つプロジェクトもある。予算管理やプロジェクトの影響を受ける特定の個人に対しては、変数が難しい状況をもたらすこともある。

 

リスク分析の目標

6. リスク分析では、楽観的見通しの排除を目的とすべきである。また、結果についての費用と便益の予測変数も慎重に考慮すべきである。非可逆性が重要となる場合は、これも評価すべきである。

 

7. 楽観的見通し発生の可能性は、たとえば同じような特徴を有する過去のプロジェクト結果と対比して判断すべきである。しかし、過去の問題やそれらと同じような問題は将来発生しないという確証でも、その真価を検討すべきである。過去に同じような経験がなければ、プロジェクトの構成部分である費用と便益を個別に検討し、包括的な楽観主義を排除すべきである-その場合には、結果というものはたいてい、最初の予測に比べはるかに良くなるよりもむしろ、はるかに悪くなる可能性の方が高いという点を肝に銘じておくべきである。

 

例1

最有望結果と期待結果の相違点を説明する典型例として、建設計画案に対してA、B、Cという3つの結果を想定する。この3つの結果は、建設費、将来の用途、気象条件といったいくつかの要素と下表に示す確率に合せたものである。純便益(純現在価値)は不確定だが、下に記す3つの予測結果の範囲により十分表わすことができる。何しろ、これらの予測結果は、建設と維持にかかる費用と期間が実際には予定よりもはるかに良くなるよりもむしろはるかに悪くなる可能性の方が高いという点を反映させたものである。

 

038-1.gif

 

最有望結果は確率が最も高いものであるので1,000万ポンドのBである。

期待結果は、各予測結果3にその確率をかけた値の合計であり、次のように算定される。

 

(0.2×1,100万ポンド)+(0.6×1,000万ポンド)+(0.2×400万ポンド)=900万ポンド

 

したがって、最有望結果を投資選択の基準として採択すると、100万ポンド分だけ楽観的な見通しとなる。

 

3 実際には、費用と便益という各構成要素の期待値から期待正味現在価値(NPV)が当然得られると想定してもいっこう構わない。ただし、厳密に言えば、正確な値が得られるのは、各種の費用と便益の確率が互いに無関係な場合だけである。そうした確率が互いに関係があれば、さらに複雑な算定方法が必要になる。

 

 

 

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