日本財団 図書館


第2節 仙田郷の地域活性化に向けての環境・景観面からの提案

 

1 地域活性化と景観整備の考え方

これまでにも述べたように、仙田郷は山間地に位置し、さらに豪雪地帯ということも加わって生活面、農業生産面いずれにおいても極めて厳しい環境下にあり、過疎問題が深刻化している。そんな中、仙田郷の自然資源や人材の活用、「道の駅」機能をもつ中核施設の整備を中心とした「中山間地域総合整備事業」がスタートし、外部との交流を基軸とした地域活性化を目指す動きが生まれつつある。

こうした計画を進めていく上で最も重要なことは、仙田郷がもつ多様で魅力的な環境・景観をいかに保全・活用していくかということであろう。

外部との交流を基軸とするためには、人々がこの地区を何回も来訪するに足る魅力を備える必要があり、さらにその魅力を人々が十分に体験できるような仕組みを造り上げることが重要であろう。この地区の魅力源としては、これまで明らかにしてきた景観や自然環境だけでなく、人情味豊かな人々との出会いや語らい、それに地域固有の「食」(現在「食」の研究会などで開発検討中)などがあげられる。これらが相互に関係し合って地域の魅力が生まれるといえるが、本節では特に景観整備とその活用に焦点を絞って課題を指摘し、解決の方向を考えてみたい。

ところで、仙田郷の景観の特徴は、生活や農林業活動を通して人々が長い年月をかけて土地や自然に働きかけてきた結果生まれたものであり、そうした働きかけが失われると景観は荒廃する運命にある。特に管理された水田や棚田の景観が魅力源として果たす役割は極めて大きいが、過疎化や減反政策などの影響も加わって休耕田が増えつつある。したがって、この地域の景観保全・形成を考えるとき、景観特性(回遊ルート等からの見られやすさ等)を意識した水田を始めとする景観の「計画的管理」ということが大きな課題となる。

また、景観に無配慮な施設整備や建設事業によってせっかくの魅力的な景観が損なわれている事例も少なくない。こうした「マイナス要素の除去、改善(修景)」や「景観スケールに配慮した構造物の整備」も大きな課題である。

一方、人々が集まる拠点施設や主要道路沿いなどでは、積極的に仙田郷の特徴ある景観を創造し、仙田郷の魅力をアピールすることも必要である。特に、基礎調査で指摘された多様なハサ木の景観は、そのモチーフとして重要である。

さらに、外部からの訪問者が仙田郷の各所に分布する魅力ある景観を地元の人々と出会ったりふれ合いながら楽しく体験できる仕組みづくりも将来は必要となろう。

こうした観点から、仙田郷の景観づくりについて検討を加えた。

 

2 景観整備におけるマイナス要素の除去(改善したい景観構成要素)

仙田郷の景観には、一見平凡な中にも地域特有の、あるいは地域らしさを表わす魅力がある。「瀬違い」「棚田」「ハサ木や玉石」のある集落風情などである。もちろんこれは代表的な景観のひとつであり、実際にはさまざまな景観構成要素が絡んで、多様な景観ができあがっている。しかし、本来的に魅力のある景観も、これに絡む景観要素によっては著しく魅力を落としてしまうことが少なくない。

このようなマイナスの景観要素は、時間的にも資金的にも比較的改善が容易なもの、更新にともなって改善が可能なもの、金をかければ可能なものなどさまざまで、私有物か公共物かによっても異なってくる。しかし、わが国のこれまでの経緯から、景観の変化は、景観への強い意識を持たないかぎり、悪くはなっても良くなることはほとんどない。なりゆきに流されれば仙田郷の価値ある景観も、確実に失われていくと思われる。

景観を保全あるいは改善していくには、行政と住民が共通の意識と目標をもち、一体となって取り組まなければ成果は上げられない。そういう意味ではしっかりとした景観計画を立てる必要があるが、ここでは、どのような景観構成要素をどのようにすればマイナスの景観が改善できるのか、一例を紹介する(写真3-5,6)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION