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気候値の勾配がもたらす誤差の評価

 

見延庄士郎 (北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

 

要旨

岩崎氏がグリッド化アルゴリズムとして使用した、緯度・経度5°×5°の月毎での単純平均において、BOX内に気候値の勾配が存在することに起因する誤差の大きさを評価した。観測された気候値の勾配と観測点数から、1901年〜1932年の平均として、気候値の南北温度勾配が大きな30〜45°Nで0.3〜0.6℃の誤差が生ずることが示された。この誤差は、あらかじめ細かいグリッドで気候値を作成し、個々の観測値をそれからの偏差としてから平均操作をすることで、取り除くことが可能である。

 

1.  はじめに

岩坂氏より配布されたグリッドデータは、観測値から直接5°×5°×月のBOX内の平均を求めている。この方法は、BOX内に気候値の勾配がある場合には、一定の誤差が生ずることが避けられず、BOX内の観測点数が少ない場合には大きな誤差をもたらす可能性がある。この誤差の大きさを評価しておくことは、本グリッドデータを気候変動の解析に用いるさいの限界と信頼性を知る上でも有効であろう。そこで、本レポートでは、観測された気候値の勾配と、観測点がBOX内にランダムで統計的に一様に分布するという仮定にもとづいて、この誤差の大きさの評価を行おう。

 

2. 解析方法

簡単のためにまず一次元の場合を考えよう。あるグリッド点が代表するべき区間の中に、気候値として温度勾配が存在し、その大きさが±δTであるとする。この範囲に観測点は統計的に一様分布すると仮定すると、ある年の水温分布に経年的な偏差が存在しない場合にも、観測された水温がグリッド代表値の偏差にもたらす寄与は、±δTの範囲の一様分布となる。この見かけ上の水温偏差がもたらすグリッド平均値へのエラーは、次のように一様分布する数列の累積平均値として表現される。すなわち、

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