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しかし、敢えて特徴を述べる。第1主成分の時係数によると、1930年頃から温度が高くなる特徴を抽出している。1940年代前半の急激な変化は戦争の影響のためデータが欠落している海域が多い結果であると思われる。固有ベクトルは選択したほぼ全海域で正の値を示しており、特に北太平洋の北緯40度付近において最も顕著にその特徴が現れていると考えられる。また、第2主成分は1940年代の温度のシフトアップを抽出している。固有ベクトルは南半球ではほとんどが負の値を示しており、正の固有ベクトルをもつ地域は北太平洋中西部部であり、特に日本付近の値が大きい。前にも述べたように1940年代のシフトアップは主として北太平洋太平洋西部の特徴であると考えられる。固有ベクトルの正域の極大値が日本付近にあることから、1940年代の気候ジャンプは日本付近でその特徴が顕著に現れていると考えられる。

先程も述べたが、戦前のデータが十分に存在しないことは気候変動の解明にとっては非常に残念なことである。気候変動の解明に関しては長期間におけるデータの蓄積が不可欠であり、今回デジタル化したKoMMeDS-NFやこれを用いた研究が注目を浴びることにより、世界の気象および海洋機関の持つ紙ベースのアナログデータがデジタル化される動きが加速することを願いたい。

 

参考文献

 

花輪公雄(1996):大規模大気海洋相互作用の実態. 大気海洋の相互作用.鳥羽良明編, 東大出版会,第4章,115-154.

花輪公雄(1997):北太平洋に見出された約10年/数十年スケールの変動. 月刊海洋vol29,No11,637-648.

山元龍三郎,西憲敬,星合誠,角野有香(1989):グローバル平均気温の上昇傾向,第3回 WCRPシンポジウム報告集,100-107.

山元龍三郎,岩嶋樹也,サンガN.K,星合誠(1986a):気候ジャンプ, 京大防災研年報,29,B-1,297-313.

Yamamoto R.,Iwashima T.,Sanga N.K. and Hoshiai M.(1986b) :An Analysis of Climatic Jump, J. Meteor. Soc. Jpn.,64,2,273-280.

 

 

 

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