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2.4 主成分分析結果

 

多くの研究者が主成分分析(EOF解析、Empirical Orthogonai Function)を利用し、変動のパターンとその時間変化を求めている。ここでは、KoMMeDS-NFおよびCOADS-MSTGの海面水温を用いて同様な解析を行った。

まず全球を対象に1961年〜1990年における緯度経度10度格子の月平均海面水温の偏差についてのEOF解析を行った。第1主成分および第2主成分の結果をそれぞれ図2.19、図2.20に示す。それぞれの図の上段は固有ベクトルの分布図であり、下段は主成分得点(以後 時係数という)の時間変化を示す。第1主成分の時係数に3〜5年周期の変動が見られる。これがENSO現象に対応すると考えられる。
また、1970年代半ばに時係数のシフトアップが見られる。これは1970年代の遷移を抽出しているものと考えられる。固有ベクトルは正負とも太平洋の値が大きく、大西洋やインド洋では第1主成分の変動は顕著でない。固有ベクトルの値は東部太平洋赤道域で極大値となり、太平洋中部赤道域や東部中緯度が正の値を示しているが、北太平洋中西部が負の値であり、互いに逆位相の変動域となっていることが考えられる。つまり、太平洋中部赤道域で相対的に温度が高(低)い時期には北太平洋中西部では温度が低(高)くなるのである。また、第2主成分の時係数は1960年代がやや高温であり、1970年代がやや低温である特徴を示している。固有ベクトルは日本近海で正の値となり、ペルー沖海域において負の値となっている。図2.14や巻末資料の長期変化図により両海域を対比すると、逆位相となる特徴が表れている。

これら戦後のデータを用いた解析は多くの研究者によって行われてきたが、戦前についてはデータ数が圧倒的に少ないために解析が満足に行えない現状である。今回KoMMeDS-NFをデジタル化した機会に少々無理はあるが、戦前のデータについてもEOF解析を試みた。具体的には1901年〜1960年のデータを用い、各10度格子において期間内に80%以上データが存在する海域のみを選択し解析を行った。その結果を図2.20(第1主成分)および図2.21(第2主成分)に示す。連続してデータが存在する海域は近年に比較して極めて少ないことがわかる。ENSO現象の存在する太平洋赤道域にデータが存在しないため、この結果は全球の変動の特徴を示してはいない。そのため、1961年以降の結果と対比は出来ない。

 

 

 

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