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表2.6に太平洋、表2.7に大西洋の各海域における海面水温の長期変動傾向の特徴を示す。調査した海域すべてについて20世紀前半は海面水温が現在よりも0〜1℃程度低かったと考えられる。また、大西洋については19世紀後半の温度が20世紀前半よりも高い値を示している海域がある。大西洋では主として北半球に1920年代に温度のシフトアップしている海域が認められるが、南半球ではその特徴が見られず、1960年代以降に温度上昇が認められる。これは山元(1989)が気温について半球または帯状海域により調査した結果と一致している。彼はこれにより北半球と南半球の温暖化については異なるメカニズムが考えられることを指摘している。

近年についてみれば、山元ら(1986a,1986b)が提唱した1940年頃の「気候ジャンプ」に相当していると考えられる海面水温上昇が、特に北太平洋西部中緯度以北の海域に認められる。この現象は陸上の気温データでも認められるので観測密度の違いによるものとは考えられない。これらの海域以外においても1940年代に水温上昇が起こっているが、1940年代後半に再び元のレベルまで下降しているので、第二次世界大戦期特有の誤差である可能性は否めない。

また、多くの研究者により1970年代半ばに海洋気候が急激に遷移していると指摘されており、以降から1980年代はそれ以前に比べ赤道太平洋ではエルニーニョが頻発し、ラニーニャが無くなったと言われている(花輪、1996)。一方、これらの図より太平洋の各海域では太平洋東部および中部低緯度で1970年代半ばに海面水温が上昇し、太平洋中西部高緯度では逆に低下している。ここに示す解析結果は1970年代後半の遷移をよく示しているのではないかと考えられる。

これらの現象のメカニズムについては、多くの気象および海洋関係の研究者によってその解明が進められている現状である。

 

 

 

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