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第2章 海面水温の長期変動

 

2.1 概要

 

本章では特に海洋気候の長期変動に関する研究で最も注目されている海面水温について、太平洋および大西洋における長期変動解析を行った。なお、解析については品質管理を行ったKoMMeDS-NFとCOADSを合成した海洋気候データセットを用い、前章により求めた観測方法による誤差を補正している。

 

2.2 海域別の海面水温の長期変動

 

COADS-MSTG、KoMMeDS-NFを用いて補正を行った海面水温の経年変化図を作成した。解析の対象とした海域を図2.13に示す。対象海域は、太平洋西部・中部、東部および大西洋西部・東部について各半球の高緯度(緯度40-50°)、中緯度(20-30°)、低緯度(0-10°)の経度30°幅の全30海域である。

図2.14および図2.15にそれぞれ太平洋、大西洋各海域における月平均海面水温平年偏差の5年移動平均値の95%信頼限界区間を描いた。ここでは平年値を1961年〜1990年の30年平均値とした。また、第2部の巻末資料に、それぞれの海域について、各月の平年偏差を加えた詳細な図を掲載している。データの最小単位が緯度経度2度格子であり、平均化処理の際には緯度方向に温度傾度が大きいことを考慮し、まず緯線方向の緯度2度×経度30度の帯状域内のデータについて平均化を行い、その後経線方向に各帯状域の平均化を行った。その時に緯度2度×経度30度の帯状域全5個のうち1つでもデータが存在しない帯状域がある場合は、緯度10度×経度30度海域のデータはないものとみなした。このようなデータの平均化処理方法の都合上、経度方向に温度傾度の大きな海域については海面水温の変動傾向を的確に示さない可能性があるため、それに該当する南半球中緯度・太平洋東部および南半球中緯度・大西洋東部については解析対象から除いた。

海域によるが、全般に太平洋では19世紀のデータや第一次世界大戦や第二次世界大戦期のデータが乏しい。ただし、北太平洋西部についてはKoMMeDS-NFのデジタル化により、第一次世界大戦期のデータが充実している。それに対し、大西洋では両世界大戦期にややデータが乏しい海域はあるが、19世紀後半からデータが存在する海域が多い。また、どの海域も年々95%信頼限界が狭くなっており、データの増加と共に信頼性の高いデータセットとなっていることが分かる。

 

 

 

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