日本財団 図書館


1.4 海洋気候の全球分布

 

KoMMeDS-NFおよびCOADS-MSTGの海面水温、気温、海面気圧、風向風速について、20世紀前半(1911年〜1940年)と20世紀後半(1961年〜1990年)の30年平年値の全球分布を図2.7〜図2.12に掲載した。各要素につき、北半球の夏季、冬季、通年の分布図を示している。また、補正を施した海面水温および観測方法に時代的変化の少ない海面気圧については、両者の差の分布図を作成した。なお、本編には通年の分布図のみを掲載し、夏季および冬季の分布図は第2部の巻末資料に掲載した。

 

海面水温

 

図2.7および巻末資料に通年および北半球夏季・冬季における海面水温の平年値の全球分布を示す。赤道付近においては広範囲に一様な温度分布となっているが、中緯度における海洋の西部と東部を比較すると前者の温度が高いことが分かる。それに対し、高緯度では後者の温度が高い。これは西へ向かう赤道海流が海洋の西部において大陸に妨げられて南北方向の流れになっているためである。その結果、大陸東岸(海洋西部)では暖流(例えば黒潮)が高緯度へ流れ、大陸西岸(海洋東部)では寒流(例えばカリフォルニア海流)が流入するので温度分布の非対称が形成される。高緯度では循環の向きが逆になる。すなわち、大陸東岸(海洋西部)では寒流(例えば親潮)が低緯度へ流れ、大陸西岸(海洋東部)では暖流(例えばアラスカ海流)が高緯度へ流れる。その結果、大陸東岸では大陸西岸に比較して海面水温の南北傾度が大きい。また、大陸東岸では西岸に比較して温度傾度の大きな緯度帯が南北に季節変動する傾向にある。

20世紀前半と後半では平年値の大まかな分布傾向はよく似ている。しかし、20世紀前半は、高緯度および太平洋赤道域の分布が明瞭ではない。逆に、南半球太平洋東部の南緯40〜60°、西経90〜120°付近では20世紀後半のデータでは分布が得られず、20世紀前半のデータでは比較的明瞭な分布を示していることが分かった。

図2.8および巻末資料には、通年および北半球夏季・冬季における20世紀前半と20世紀後半との海面水温の差(後半-前半)を示している。それらの図より20世紀前半は全体的に温度が低かったと言える。介在する不規則誤差を考慮しても有意な昇温が認められる海域は、北半球夏季においては北半球の太平洋中緯度、大西洋南部、インド洋アフリカ東岸、オーストラリア周辺海域であり、北半球冬季においては太平洋北西部、大西洋北西部、ハワイ付近、南半球高緯度大西洋、南アフリカ東岸、オーストラリア南岸海域である。通年ではアジア東岸、ハワイ付近、オーストラリア周辺、南大西洋高緯度地域の温度上昇が有意であると言える。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION