4. 研究の成果の概要
この研究の成果は第1部から第3部に詳しく述べるが、要約すると次のとおりである。
(第1部)
神戸海洋気象台が1889年から1960年まで収集した「海上気象報告」のうち、1901年〜1921年の約26万通を電子媒体化した。平成7〜9年度事業で作成したデータにこれらを合わせると、約159万通のデータが電子媒体化された。
品質管理を行った後の「KoMMeDS-NF」データセットは、データ概要の解説と一緒にデレクトリ形式で整理されCD-ROMに格納された。このCD-ROMは国内外の気象、海洋関連機関及び利用者へ配布される。
(第2部)
日本近海において気候ノイズを算定した結果、COADSデータセットのみの場合より、KoMMeDS-NFを加えたデータセットの方が小さいことが明らかにされ、KoMMeDS-NFデータセットの有効性が確認された。また、陸上より海上データの気候ノイズが小さく、気候変動の研究には海洋気候データが重要であることが示された。
海面水温の変動解析を行った結果、太平洋東部においてENSOに相当する3〜6年程度の周期が卓越し、その他の海域では概ね10年程度の周期が卓越している。1940年代の気候ジャンプは、北太平洋中部及び西部において顕著であることが示された。1970年代半ば以降では、エルニーニョ現象が起こりやすくなっていることを確認した。
(第3部)
北太平洋における海面熱フラックスが1950年以降より以前で小さい原因が、風速の違いにあることが明らかになった。この違いは観測方法の変化等の人工的な理由によるものである可能性が高い。緯度経度5度内の月毎の単純平均において、BOX内に気候値の勾配が存在することに起因する誤差の大きさを評価した。月平均値の分布の空間構造にやや乱れがあり、データ数密度がまだ不十分であることが示唆された。