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はしがき

 

1997年12月、笹川平和財団の後援および世界気象機関の協力により、気象庁と日本気象協会が「気候変動の監視・予測及び情報の利用に関する国際ワークショップ」を神戸で開催しました。この会議で発表された「神戸ステートメント」の中では、「気象観測、観測データの品質管理及びその保存を確実に行うことが必要であり、確度の高い気候情報を政策決定者をはじめ研究者や産業界のみならず、広く一般に対しても、積極的に公開・提供することが重要である」としています。

現在までそれぞれの目的により多くの気象観測がされてきました。それらの観測データは気象監視や予報のために使用され、第一義的な役割は十分果たしていると考えられます。これらの観測データを長期間にわたり集積した歴史的データの気候研究への利用の重要性が、最近認識されてきております。

歴史的データは一般に、印刷物やマイクロフィルムで保管されております。それらは膨大な量ですが、電子データに変換されていないため、気候研究等に未だ利用されていないものが多いと言えます。気候変動の解明が緊急の課題である現在、歴史的データは重要な意義を持つものであり、これらを電算機処理が可能な形で整備される必要があります。

また、気候変動の要因は十分に解明されているとは言えず、科学的な調査研究が最優先の重要課題の一つであると言えます。そのために過去から現在までの気候の実態を調査し把握することが重要な課題であると考えられます。

本事業では、民間船舶の協力の下に神戸海洋気象台に収集・蓄積されてきた、1890年から1960年までの船舶海上気象観測データを電子媒体化して、海洋気候の変動の把握に寄与することを目的としております。これにより海難を防止し、安全な航行を支援すると同時に、地球温暖化に関連した海運活動や海洋土木活動のあり方を検討するうえで、重要な基礎資料を与えるものと期待されます。

研究を推進するにあたり、ご指導を頂きました委員の方々に厚く御礼申し上げます。

 

平成11年3月

財団法人 日本気象協会

会長 町田直

 

 

 

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