5.2.2 本格実施に向けての課題
再試行や本格実施に向けての課題は、基本的には上述した問題点の改善であるが、要約すると以下の通りである。
1] 地道な普及啓発活動
・ 市民の合意を得るためには、通勤交通問題の実態やTDM施策導入の社会的要請(環境負荷の軽減を含む)、導入効果等の広範囲かつ継続的な普及啓発活動を推進していくことが必要不可欠である。
・ システムの成功・定着は市民意識の如何にかかっている。
2] 多様なモニター募集手段の採用
・多くのモニターの参加を得るためには、募集の方法として、例えば郊外居住地側へのアプローチ等、多様な手段を採用することが必要である。
3] 十分な準備期間と事前意識調査等の実施
・実証実験を成功させるためには関連機関相互の連絡調整や市民に対する事前意識調査等が必要であり、十分な事前準備とそのための時間を確保することが必要不可欠である。
4] 参加者への十分な経済的インセンティブの付与
・ アンケート調査結果でも分かるように、通勤者が交通手段を選択する主要因は「所要時間」と「通勤費用」である。このうち、通勤費用に関しては公共駐車場の活用や民間との連携(郊外商業施設付帯駐車場の利用等)により駐車場代を無料にすることが必要である。
・ 一方、バス代については、マイカー通勤と比較しても高くなることがないような「思い切った料金設定」が必要である。そのためには、システム導入効果が広く社会一般に波及することを背景に、バス事業者に対する公的補助制度の創設等を検討する必要がある。
5] バス優先走行のためのハード施策、ソフト施策の展開
・ 現実の道路施設整備状況と交通需要の関連を考え合わせると、バス優先走行のためのルートの追加設定や規制強化は、それだけでは自動車交通流に大混乱を引き起こす可能性が高い。
・ しかし、マイカー通勤に対してシステム利用の場合に相当程度の時間短縮が図られない限り、システムの定着は困難である。
・ 実質的にバス優先走行が可能となる、必要なハード整備やこれと連動したソフト施策(交通管理、交通管制)を中期的にも検討していく必要がある。