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「東町」では、交通規制区間のバスレーンが遵守されなかったため、交通状況の変化はほとんどみられなかったばかりでなく、並行路線では渋滞長が増加した。

●乗り換え地点から市役所前までの所要時間:いずれのルートにおいても、現行のバスに比べてシステムバスの所要時間は短縮されている(H8中の瀬:約10〜15分、H9東町:約2〜4分、H9武蔵ヶ丘:約11〜14分)。平成8年度の中の瀬バスルートと平成9年度の武蔵ヶ丘バスルートでは、試行路線における他の車の所要時間も短縮された。

●試行への参加理由:試行への参加理由(第1位)は、平成8年度は「熊本市の新しい試みに興味を持ったため」が、平成9年度は「交通混雑や環境問題を考え、参加する意義を感じたため」へと変化しており、試行を行ったことによるシステム導入意義の浸透や市民へのアプローチの効果が伺える。

●システム全体への評価:アンケート結果によると、システム全体への評価は「満足」とする人が過半数を超えている。

●通勤時の所要時間に対する評価:アンケート結果によると、通勤時の所要時間に対する評価は、「武蔵ヶ丘」が最も高かった。これはシステム交通の定時性が保たれたことに加え、事前のモニター個人の予測以上に速達性が確認されたためと思われる。「中の瀬」では天候や東BPでの事故などの影響で日別の到着時間が変動したことが評価の低さにつながったものと推測される。

●バスの着座性:アンケート結果によると、必ず座って利用できた専用バスでは評価が高かった。座って通勤できることは利用者にとってシステム転換への重要事項であるといえる。

●乗り換えの移動距離:アンケート結果によると、駐車場から乗り換え停留所までの距離が、夕方のみ約200mあった「武蔵ヶ丘」では、他の朝夕とも駐車場内乗降としたルートより評価が低くなっている。

●自動車通勤をする理由:アンケート結果によると、自動車通勤をする理由は「公共交通機関は車より時間がかかる」とする人が最も多かった。

●試行システムが本格実施された場合:アンケート結果によると、試行システムが本格実施された場合、約6〜7割の人が「試行したシステムで諸条件が整えば利用する」としている。

 

問題、課題

●P&Rシステムの成功のためには、公共交通機関の所要時間が優位になるような公共交通優先施策の組み合わせが必要である。

●システム交通に関して、路線バスの速達性、定時性の確保が課題である。

●各ルートにおける個別課題:国道266号浜線バイパスの4車線化、県道熊本浜線の主要交差点への右折レーン設置と交通規制、バスベイの設置(平成8年度 中の瀬バスレーン)。バスレーンの機能確保、既存バスの増便(平成9年度 東町バスルート)。通行制限による国道3号への負荷を軽減させるための迂回対策の検討、試行実施状況に合わせた信号運用の検討、道路の部分拡幅とバスベイの設置(平成9年度 武蔵ヶ丘バスルート)。

 

参考文献

1)溝上章志・柿本竜治・首藤成次郎、P&Rシステムの需要予測のための調査およびモデル構築法、土木計画学研究・講演集No.20(2)、1997.11、pp843-846

2)栄徳洋平・溝上章志・中村宏、P&Rシステムと公共交通優先施策の組み合わせ効果の簡易分析手法、土木計画学研究・講演集No.20(2)、1997.11、pp847-850

3)中俣春樹・首藤成次郎・溝上章志、社会実験への参加がP&Rモニターの手段選択意識に与える影響分析、土木学会第53回年次学術講演会、平成10年10月、pp638-639

4)熊本市交通計画課、熊本市パークアンドライドシステム研究会 平成9年度P&Rシステム試行実施結果報告書、平成10(1998)年3月

 

 

 

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