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●高橋

ご紹介に預かりました東京大学の高橋でございます。今、専門が都市交通計画ということでお話頂きましたが、都市交通計画と言っても広くございまして、太田先生が先程お話し頂きましたようにバスを取っただけでも大変広い分野でございます。私はバスも以前から関心があったのですが、安心・安全というものをキーワードに、近年2年ほど研究させて頂いております。

大きな転換期としては阪神大震災もありましたし、今年の8月の水害。国土の安全・安心を含めまして、防災という観点の研究が必要になります。その際、必ずネックとなってくるのは身障者、高齢者を含めまして、防災避難に関する弱者の観点が必ず話題になってきます。これは非常時に話題になるだけではなく、通常時の交通、移動に関しても高齢者、身障者の交通に関する移動モビリティの確保というのは、大変重要な問題ではないかと考えています。

私も話したいことは、先程の太田先生の話に重複するかもしれませんが、私なりの視点でお話させて頂きたいと思います。

まず、私は公共交通計画を特に都市交通計画の中で担当しております。今、大学も東京にあることから、東京の交通問題をどのように考えたら良いのかということで2分ほどお話させて頂きたいと思います。東京に関しては世界的に地下鉄、JR等の軌道型交通機関が世界最高水準だと。量的に言えばですね。それは皆さんの合意のある所ではないかと思います。公共交通のシェアも大都市に関して言えば、東京は最高です。これは社会の大きな流れから言うと、環境に与える負荷は少ないはずだと考えます。如何せん、自動車交通量が多過ぎます。ですから、この公共交通のシェアをいかに維持していくのか、さらに高めていくのか、というようなことは、交通計画上大変重要であると考えております。

しかし、その際交通事業者の側面というのは、必ず問われてくる訳です。公共交通というのは確かに公的な任務があるのは当然です。しかし、交通事業者としても成立していかなければいけないということ。それを考えますと社会政策ですとか、福祉政策というようなことを公共交通が担うというのは当然ですが、これをいかにして担っていくのかということが大変重要な課題だと思います。確かに任務としては重要な話ですが、際限がない形で補っていくべきかどうかというようなところはさらに議論が必要だと思います。

それで、私がいつも考えているのはなるべく効率的でかつ、資源を有効に使うと。かつ、ユーザーが喜んで頂けるような形で社会政策、福祉政策的な側面を担っていくようなことができないかというようなことです。要するにバスというのは、まだまだ非効率な部分があるのではないかというような話題提供であります。これは私の研究室でいろいろ研究させて頂きますと、事業者さんによりましても積極的な事業者とまだまだ努力の余地というか、改善の余地があるのではないか、経営をアセスメントできるような形のモデルを作って、いくつか検証して論文を発表させて頂いたことがございます。そうすると社会的な余剰、要するに社会全体が良くなることと、会社が良くなることが同じようなベクトルで行く場合もありますし、社会全体が良くなることと、会社が今向かっているベクトルが若干ずれてきているような所もあると。そういうような所はやはり公的な補助ですとか、あとは融資が必要な所もあると思います。要するにこの先にもっと儲かるような楽園があれば、それをみせてあげて、そこまで至るための融資というのも考えてもいいのではないかと考えまして、事前に将来どういう状況になるのかについてアセスメントすることも重要だろうと思います。

 

 

 

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