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3) 市民参加の可能性

 

ちょっと時間が無くなってきましたが、最後の話題に行きたいと思います。こういったまちづくりをする上で、我々市民がどういった関わりをすれば良いか、ということです。

1つはどういうまちづくりをするかと考える時に、我々市民がどのように関われるかというところです。もう1つは、維持管理という言葉はあまり良くないですけれど、運営ですね。はっきり言えば誰がお金を出すかということであります。これは議論になるところでして、後ほどのパネルディスカッションで是非展開したいと思いますが、公共交通、特にバスなんかが営利事業であって、いわゆる独立採算でいかなくてはいけないという考えは、かなり日本が少数派でありまして。ヨーロッパ、アメリカの殆どの国は、税金である程度賄うのが当然だと考えます。極端な例がアメリカのいくつかの都市のように全部税金で賄ってしまう、タダにしてしまうという考え方です。

つまり公共交通というものを市民全体にとって非常に重要な足だと考えた時に、それでは税金でそれを維持していくということが、1つの選択肢として出てくる訳でありますが、これについてはいろんな議論をしないといけないというふうに考えております。

1番目について、あと3分ほどお時間を頂いて1つだけ例をご紹介したいと思います。レジュメにもちょっと予告しましたが、鎌倉の例です。鎌倉の場合も、バスを何とか動くようにしなければいけないという状況です。観光地ですから人が歩道に溢れるわ、渋滞はするわ、バスは動かないわということになりまして、バスが15分位で行ける所を2時間位かかっちゃったりする訳です。これを何とかしないといけないと。しかも、これを何とかしようとする時に、地下にトンネルを掘って通過交通を全部流すというようなブレイクスルー型の解決策というのは非常に時間がかかる。やはりトレードオフ型でいかなきゃいけないと。つまり誰かが何かを我慢して、全体としてプラスになるようなバランスに変えていかなきゃいけないというような時に、例えば自動車の使い方を我慢してもらうなどを行政が提案して、市民が守るというような事例は、ちょっと時代遅れではないかと、むしろ無理じゃないかというようなことから、こういう市民を中心とするメンバーが集まって何とかすると言うことを考えた訳ですね。その中には交通事業者の方にも入っておられますけれども、皆で考えた訳です。そして皆が考えた最大のことがこの市民宣言というものです。自分たちで自動車利用を自粛して、徒歩と公共交通を中心としたまちを作りたい。子供や高齢者にもやさしいまちにしたい。というようなことを市民宣言(案)として出しました。また、観光客にも自動車を自粛してもらおうと。そして、自粛してもらう具体的な手としてはここにある通りです。

「パーク&バスライド」。駐車をしてバスで来てもらうというのは勿論ですけど、それ以外にもゲート、一種の関所を作って、ここから中に自動車で入りたい人はお金を取る。取られるのが嫌なら、パーク&バスライドか、電車で来てもらおうと。こんなことを考えた訳ですね。

これが実現できるかどうか、一生懸命やっているという段階でございます。パーク&バスライドの実験をやったり、それに今年の5月には「環境手形」という実験をやって、「環境手形」を買えば、何回でもバスが乗り降りできる。そんなこともやりましたし。それから今日出ておりますノンステップバスを持ってきて、これを試乗体験するということもやりました。それからちょっと見にくいかもしれませんが、乗合タクシーというものを作りまして、バス路線が無い所を乗合タクシーで代替しようと。そういうこともやりました。

こんなふうに我々の住んでいる街には、いろんな人がいて、いろんなニーズ、いろんなことに困っている、いろんな人達がいると。これからの時代を考えると、こういう人達が皆で集まって、皆でオープンな所で議論をして、皆で納得しうる答えを出していこうと。これが1つのやり方だろうと、これが今ご紹介した例でございます。

私の話が一通り終わりました。やや結論めいたことは申し上げられませんでしたが、引き続きましてパネルディスカッションというものがございますので、そちらの方で今の続きをお話ししていきたいと思います。

とりあえず、ここで締めたいと思います。どうも、ありがとうございました。

 

 

 

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