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日本海は、ロシア、韓国、北朝鮮、中国、日本に囲まれた国際的な海である故,さまざまな呼び名がある。我々は、一般的に「日本海」、英語で"Japan Sea"と言っている。韓国の人は、自国から見れば東側にある海を「東海」、"East Sea"呼ぶことが多い。ロシア人たちは、"Sea of Japan"と呼称するようである。

日本海の呼称には、歴史的な背景や国民感情の問題もあり、場合によって慎重に扱う必要がある。当水産研究所では、機関名に「日本海」が用いられていることから「日本海」を用いる場合が多い。しかし、「日本海」を日本の海と考えて仕事をしている訳ではなく、ましてや魚の生活を考える場合、日本海のなかに境界が存在することなどあり得ない。

 

○日本海は注目されている

近年、海洋気象・海洋物理の分野で「日本海は注目されている」ということを耳にする。1993年に開始された"CREAMS:Circulation Research of the East Asian Marginal Seas"という日本・韓国・ロシアの国際共同研究が、1998年から第2期に移行し、アメリカも加わり日本海の水塊構造と海洋循環に関する研究を精力的に展開していくことになっているためである。では何故、日本海なのか。日本海は,狭い海であるため国際共同ができれば沿岸から対岸まで、海面から海底まで精密に観測できる絶好の場である。他方、日本海は狭い海とはいえ、太平洋や大西洋など大洋での気象・海洋現象のかなりの要素を含んでいる。つまり、北側には亜寒帯系水、南側には亜熱帯系水が分布し、大気と海洋の相互作用によって海水ができる海域もあり、中層水や深層水も日本海で形成されている。このように大洋のミニチュアとしての日本海の特殊性と冷戦の雪解けが、近年多くの研究者の注目を引きつけているわけである。

魚にとっては境界のない海においても、人間の手にかかればなわばりが生じてくる。国連の海洋法条約では、12海里以内で設定した領海内で外国船の領海侵犯を取り締まることができる。また、排他的経済水域(EEZ)は200海里以内で、沿岸国はその水城内の経済的開発の主権的権利を持ち、漁獲可能量(TAC)を決め、生物資源の保護と管理を行い、海洋環境の保全を図り、海洋科学調査などに努める義務をもつ。EEZは我が国の海だと主張するだけではなく、食料の安定供給と海洋生態系の保全が重要である。このことから当水産研究所が果たすべき役割は、生物資源を適切に管理すること、すなわち科学的根拠に基づく正確な資源評価とその診断を行うことである。この結果に基づき、行政機関が対象種ごとに漁獲可能量を決定し、余剰分があれば他の国への漁獲割り当て量を認める義務がある。私たち水産研究所の仕事は、科学ベースの研究であると同時に、その結果は国益にかかわる重要なものと考えられる。

 

 

 

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