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その結果の影響もあって島の背後にも津波が伝わる(回折)。1983、1993両年の日本海で発生した津波では粟島や隠岐の島などの裏側の本州海岸で水位の増加が見られた。これは島のレンズ効果のためである。

津波の高さは平均海水面を基準として定義することが一般的で、最大振幅は隣り合う二つの高低のピーク差の最大値とする。前者は野外調査で、後者は検潮記録で使われる。

また津波にも地震と同じようにマグニチュードmの定義があり、理科年表で使われている今村飯田の定義では1mで「0」、2mで「1」、4-6mで「2」、10-20mで「3」、30m以上で「4」である。マグニチュードが小さいときはm=log2H(Hは高さ:m)で近似される。マグニチュード4の津波の発生は日本の周辺では有史以来6回を数える。

 

〇地震による断層と津波の関係

1900年以降の日本海におけるマグニチュード6以上の地震の震央分布を見てみると、太平洋プレートの沈み込みに伴うプレート境界面に沿って起こる地震と沿岸海域での地殻の浅い部分に起こる地震に二分される。前者は日本海海底下数100キロメートルに発生するので津波を起こすことはできない。後者の地震は海底下数10キロメートル以浅におこり、津波を発生させる。1964年新潟地震、1983年日本海中部地震、1993年北海道南西沖地震はすべて後者の地震である。津波を起こすには地震が地下の浅いところで発生することの他に、その地殻変動において、地表面─つまり海底面─に上下変位を生じさせなければならない。最近の日本海の津波を起こした地震はすべて東西圧縮の縦ずれ断層として発生したので、海底に1m以上の上下変位を生じ、比較的大きな津波を伴った。横ずれ断層でも浅ければわずかながら上下変位を伴うので津波を生じることがある。1995年の兵庫県南部地震はその例である。

震央が陸上にあっても、海岸に近く、マグニチュードが大きいと、上下変位が海底まで及んで津波ができることがある。1804年の秋田県象潟の地震は海岸部を隆起させて、陸化させたことで有名であるが、酒田に津波が押し寄せた記録がある。

津波の第1波は海底が隆起した場合は押し波、沈降した場合は引き波として到達する。逆断層でも断層の傾斜角度次第で小さい引き波が大きな押し波に先行して到達することがある。

 

〇地震マグニチュードと津波の発生

地震の大きさつまりマグニチュードと津波の発生には一定の関係がある。1983年日本海中部地震では本震のマグニチュードは7.7で津波の高さ13m、最大余震は6.9で津波の高さ0.30mであった。マグニチュードが6.4以下の地震では津波は起こっていない。

 

 

 

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