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なぜなら、憲法及び諸規程のこれらの条項は、地方自治機関は国家権力機関の体系には含めないことと地方自治機関の構造は住民が自主的に決定すること、さらに市長が執行機関の構造を検討し承認し、市及び地区の行政庁の役職者及び専門家を任免する権利を定めているし、イルクーツク州憲章(1995年1月19日州議会採択、N.8/1)(17)の第52条もまた、地方自治機関は国家権力機関の体系に含まれず、その権限は国家権力機関によって一方的に停止または制限されることはないとしている。以上のことから、第32条は無効であることを認めなければならない、と申立てたのである。また、市行政庁の機構として州行政庁から独立した自治体の財務部を設置する必要性が強調され、市議会の側には連邦予算法のいかなる違反もないことをも主張した。

被告側のイルクーツク州議会及び州知事は、これに対して、法律第32条はいかなる程度においてもロシア連邦憲法及び地方自治機関に関する連邦法に違反しておらず、原告の請求を認容することは予算制度の一体性に関する現行の連邦予算法に違反し、市行政庁の予算には財政資金の一部を州行政庁が供与しており、第32条の存在は当該資金の支出を監督することを可能にし、市及び地区の財務機関は国家作用を遂行しているのであるから、これらの機関は国の財務機関の単一の機構に組み入れられてはいるが、財務部の長は市長の提案によってのみ任免され、また第32条は市長が財務部の定数増を行なうことを禁止していない、と主張した。また、ロシア連邦財務省規程第2項にもとづき、地方自治機関の財務部は、国の財務機関の単一の体系に組み入れ、連邦予算によってこれらの行政はを支えられており、これに関連して毎年市財務部を含めイルクーツク州の財務機関の維持のために余剰予算が見積もられているが、州行政庁は市財務部の活動には介入しておらず、また第32条は原告に対して独自の財源によって自治体の財務部を設置することを禁じていないから、原告の独立性を侵害しておらず、本件の紛争は通常裁判所の管轄するところではないと主張した。州裁判所は、原告側、被告側の主張にそれぞれ立入って検討し、ほぼ全面的に原告側主張を取り入れ、被告側主張を退けた(判決の詳細な判旨はここでは省略する)。

これに対する破棄審において、ロシア連邦最高裁判所は、州裁判所の判決を支持し、以下のような判決を下した。

州裁判所が手続法の規範を侵害し、市議会が原告、州知事が被告として事件の当事者とされるのは根拠がないとする破棄申立ての主張は、理由がない。裁判所は、事件に参加する者の構成に関する問題を審理し、州知事の法的立場と問題の法律に署名した事情、さらには市議会が地方自治機関にあたることを考慮し、十分な根拠をもって、申立て人である市議会が原告適格を有し、州裁判所の判決は、事件に関して収集された証拠及び法律の要請に合致しており、その誤りを認めるにたる理由はみあたらない。

 

 

 

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