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また、問題によっては、市長、町長、コミューン長、さらには省庁及び専門機関の公共サーヴィス部門長、その他の公共機関の代表者、さらには専門家も参加できることになっている。同機関は、各々の県において長期経済社会発展政策を推進するにあたって、諸々の諸機関の間で政策調整を行うことを目的としている。会議は3か月に1度、あるいは必要があればいつでも、知事ないし県議会議長の召集に基づいて、開かれることになっており、議長は知事と県議会議長が交代で務める。

具体的には、知事、省庁及び中央の出先機関の活動、県議会及び県議会の下にある公共サーヴィス機関の活動を確定するとともに、政府決定草案の作成に関してイニシアティブをとる。共同決定を実現するために、知事命令、県議会議長命令、県議会決定を定める。

 

カ まとめ

 

以上、地方行政法に関する現政府の改正案を通じて、諸機関の権限と諸機関の関係を概観してきたが、まず第1に指摘できることは、総論において、法律によって定められた権限は市民に最も身近な基礎自治体が行使するとの規定やその他の規定を新たに設けたことである。こうすることで、地行法の改正案は基礎自治体レベルの自治を重視する姿勢を明確に打ち出した。

しかしながら、第2に、諸権限を比べてみると1991年の地方行政法の規定と殆ど大差ない。上述した如く、同じ権限が幾つかの機関にまたがって重複している点では、前法と変わりがないのである。例えば、経済社会発展や国土開発、都市計画、道路、橋、インフラの整備、投資や株主としての権利の行使、教育、文化、公共の秩序維持、環境保全、社会保障や社会的援助、地方予算、借款、クレディットの承認、地方税や特別税の確立、地方財産の管理、譲渡、賃貸、専門機関、公共サーヴィス機関、公社の組織、運営規約、雇用者数などの決定、会社の民営化の諸権限は、基礎自治体議会や県議会すべてに与えられている。省庁や中央機関から地方自治体に出向している諸機関、公的サーヴィス機関などの活動については、知事が指導することになっているが、同時に基礎自治体及び県も各々それらの活動を監督するとある。これまでも、このような諸権限の分担をめぐってかなりの混乱が生じた点が指摘されているが(21)、現政府の改正案によってそういった混乱が果たして解決されることになるのか否か、疑問が残る。

この点で注目すべきは、行政委員会に代わって新しく創設が予定される「領域的協議委員会」である。行政委員会では議長を務めるのは知事に限られ、参加者に省庁等やその出先機関など国家機関の幹部が常時含まれるなど(現行地行法第106条)、中央集権的な性格が強い。

 

 

 

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