日本財団 図書館


現行の地行法第13条が、選挙を普遍、平等、直接、秘密及び自由な表現によると明確に規定し、現行の地方選挙法(以下、「地選法」といい、1991年のそれは「旧法」という。)第2条が、ルーマニア国民は、民族、人種、言語、宗教、性別、政治的信条ないし職業とは無関係に、平等に選挙権を行使できると定めているのは、ルーマニア史において選挙権が諸々の制約を受けてきたことから、将来起こりうるそのような危険性を排除するためのものであろう。

選挙権は18歳からで、住居地であるコミューン、町において投票権を行使できる(地選法第3条)。被選挙権は23歳からで住居のある行政地域からのみ立候補できる(同法第4条)。ただし、ブカレスト市区議会議員への立候補者は、ブカレスト市在住者であれば、居住する区とは無関係に立候補できる(同法第4条第3項)(18)。地方議会議員の候補は選挙区毎に、政党ないし政党ブロック別に行われる(同法第37、38、40条/同旧法第30、31、33条)。無党派の立候補は、選挙人リストに記載された選挙人の1%以上、最低でも50名の推薦を必要とする(同法第41条/同旧法第34条)。

投票数が選挙人の半数に満たない場合は、2週間後に第2回目の投票が同じ候補者リストで実施される(同法第65条)。第2回目は過半数条件は付されず、当選者は比例代表システムに則って決定される(同法第66条)。

基礎自治体議会議員の定数は、住民の数に比例して法律によって定められている。1991年の地行法では、人口3千人までが11名、5千人までが13名、7千人までが15名、1万人までが17名、2万人までが19名、5万人までが21名、10万人までが23名、20万人までが25名、40万人までが31名、40万人以上が35名、ブカレスト市総議会は75名と定められていた。1996年に一部改正された際には、ブカレスト市の定数のみが75名から65名に削減された。しかし、現政府改正案では、その議員数は3千人までが9名、5千人までが11名、1万人までが13名、5万人までが15名、20万人までが17名、40万人までが19名、40万人以上が21名とされ、ブカレスト市は65名とされている。したがって、西欧の専門家の間で、既に現行法規の下でさえ議員数が少なく抑えられていると指摘されているのに、現政府案ではその数はさらに縮小されることになる(19)

他方、県議会議員の数は、1991年の旧地行法が人口35万人以下の県では37名、50万人以下では39名、65万人以下では41名、65万人以上は45名とされていたが、1996年の改正で、35万人以下は37名、50万人以下では39名、50万人以上が45名とされた。ちなみに現政府の改正案は、人口35万人以下の県では21名、50万人以下では23名、65万人以下では25名、65万人以上の県では27名と大幅な縮小案となっている。

これら議員定数の削減は、執行機関に対して立法機関を弱体化させようとする政府の意図と解すこともできなくはないが、むしろ経済状況の悪化に伴う予算削減措置の1つと理解するのが、より現実的であろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION