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気温低減効果は緑被率1%あたり概ね0.05〜0.005℃である。その一つの例として、緑被率10%あたり-0.32℃という値を用い、東京都区部の平均緑被率22.5%とすると、気温低減にともなう節電効果を求め、公表されている発電に伴うCO2排出量0.1178kg(C)/kW・hを用いると、炭素量で2,205,216kgとなる。これは年間のCO2排出量33,200万トン(C)の0.0007%に相当する。これを全国の市街地に拡大して試算すると、0.0026%になる。

主要都市の建築物の屋上面積の20%が緑化されたとし、1m2あたり2MJの熱遮断があるという係数を用いて試算すると、79,404,353kgの炭素排出抑制量となる。また建物の全壁面の4分の1(1面のみ)の20%が緑化されたとすると、同様に59,254,615kgの排出抑制量となる。これらは緑被による気温低減効果よりも大きな値となる。

これらの値は全冷房期間を積算対象日としているので、1桁程度の誤差があり、これらの緑による直接的なCO2吸収固定量はさらに小さいことが予測される。

 

(2) 都市の緑の意味

 

屋上緑化などの新たに増加する都市の緑に、CO2吸収源としての寄与率は低い。しかし、屋上緑化には断熱材としての意味があり、空調の為のエネルギー使用量を縮減する効果が期待でき、また生態系維持空間として、大気浄化、雨水流出抑制、レクリエーション空間、景観の向上など総合的な機能があり、緑や環境、エネルギー問題などを考える環境教育の教材としての普及啓発的な役割がある。そうした意味で、都市の緑の増加に対しても、何らかの対策を講じることが必要である。

 

(3) 緑の施策の充実

 

地球温暖化対策の推進に関する法律案では、吸収源としての森林や都市の緑地等の整備を推進することを重要な施策として位置づけている。吸収量の推定手法についても、観測、調査研究の充実が求められ、それを踏まえた対策を推進することが求められる。その対策は次のように考えられている。

○ 自然性の高い森林から都市地域に残された森林に至るまで多様性を確保しつつ、体系的に保全するとともに、持続可能な森林の管理を推進する。

 

 

 

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