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運輸省海上技術安全局安全基準課

 

1.はじめに

船舶は、多国間輸送・大量輸送を支え我が国の経済活動の基本である一方、海上という厳しい環境下において単独で存在し得なければならず、高度の安全性が要求されるものである。

我が国においては、船舶安全法に基づき種々の構造・設備基準を定め、これに対する適合性について船舶検査を実施することにより船舶の安全性が確保されている。

また、国際的には、タイタニック号の事故を契機として締結された「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」をはじめとする国際条約により、外航船の安全性及び多国間における円滑な海上交通が確保されている。これらの基準は、IMO(国際海事機関)において各国の専門家により検討され、国際的に合意された上で、条約に取り入れられ、各国で実施されているものであり、我が国においては基本的に船舶安全法に取り込まれている。

救命設備は、海上において乗員・乗客の生命を確保する極めて重要な設備であり、SOLAS条約では第III章において、船舶安全法では船舶救命設備規則において、各設備の性能、設置数量、積付け方法等が詳細に規定されている。

今般、SOLAS条約においては、1994年9月のエストニア船籍ロールオン・ロールオフ旅客船「エストニア」号の転覆・沈没事故を契機として、ロールオン・ロールオフ旅客船(以下「RORO旅客船」)の救命設備の要件を強化し、また、近年の技術の進展を踏まえて、同条約第III章を全面的に見直す改正が行われた。同改正の要件は本年7月1日より適用されることとなっている。

一方、内航船については、基本的に同条約の要件に準拠しつつ、内航船の航行実態を勘案して、航行区域等に応じて緩和した基準を課している。また、カーフェリーについては、昭和40年代後半のカーフェリーの事故の多発を受け、通達により一層高い安全性を要求しているところである。

しかしながら、近年、技術の進展等に伴う船舶の大型化、高速化の進展により長距離フェリー等本邦周辺の海域を直航する船舶が増加しており、内航輸送の効率化の観点から、内航船に対する規制を見直すことが望まれている。更には、昨今の規制のあり方に対して、経済的規制は原則として廃止し、安全基準等の社会的規制についても政策目的に添った必要最小限のものとすることが要求されている。

 

 

 

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