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調和作業の進捗

現SOLASの中の乾貨物船規則が、確率論に基づく「客船規則(A265)」をベースにして作られてものであるから、この調和作業には大きな困難はないと見られていた。しかし、作業の過程で各国から種々の改正提案があったためもあって、実際の作業はなかなか進展しなかった。

中でも、1]米国が規則中のファクター「v」の見直しの必要性を船首高さの統計分析をベースに主張したこと、2]北欧州諸国がRORO船の車両甲板上への打込み・滞留水の影響を考慮すべきとの主張をしたことなどは、実際の船舶の設計への影響が大きい重要な問題となっている。そのため、日本国内では、その必要性、合理性の検討とともに、船舶設計への影響を定量的に把握するための作業をRR71の場において行っている。

 

日本の基本方針

日本側の基本方針は、乾貨物船規則については現在のSOLAS条約のものをそのまま残し、それと一貫性のある確率論に基づく客船規則を作れば調和作業の本来の目的は達せられるというものである。これは、現在の貨物船規則そのものが発効してから間もなく、かつ大きな問題点も浮び上がっていないのだから、改正する必要性自体がないという事に基づくものである。日本は、前回SLFにおいて、この方針に基づく調和規則案を作成して提出した。

そしてSLFおよびそのCGの場において、この日本の主張を繰り返しているが、全体的にはこの主張がそのまま認められるような雰囲気にはない。調和作業に加わっている各国の代表者には、できるだけ最新の、より正確な復原性の科学的知識を新規則に反映したいという意気込みが見える。この意志を拒否することはなかなか難しく、ある程度の変更については認めざるを得ないものと思われる。

乾貨物船の規則をそのままの形で残すことが難しくても、現規則を強化することは望ましくなないため、繰り返し日本の主張を行った結果、前回SLFの場において、調和作業の方針として、「現在の規則と同じ安全レベルを保つ(同じA/R値)」という事が合意された。このことによって、貨物船に対する規則が強化される危険性はなくなったが、「R」(Required Index)の値を船種毎に決めなくてはならないという難題が残った。

 

 

 

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