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4 PSC手続きの統一

PSCは旗国主義を補完する制度であり、SOLAS条約等に寄港国がPSCを実施する権利を有することが規定されている。サブスタンダード船対策の最も有効な手段として、欧州諸国が国際協力の枠組みを創設したのをきっかけに、現在、世界各地域で協力体制が構築されている。IMOはこのような現状に鑑み、PSCを実施する上での手続きを統一するガイドラインを作成し、適正なPSCの実施に寄与してきている。

 

5 ソフト基準の整備

また、ハード面の基準の充実にも拘わらず、重大海難が絶えない現状の最大の理由を「ヒューマンエラー」対策の欠如、及びソフト面の基準の不十分と認識し、ヒューマンエラー対策の確立に向けた検討、ソフト基準の整備も行ってきている。MSC69において人的要因解析手法(Human Element Analyzing Process:HEAP)が承認され、将来の規則の改正等にHEAPを使用する上での経験を得るため、各国にHEAPの試行を要請する回章が発出された。我が国が造研において実施している「ニアミス調査」の中間報告はIMOでも歓迎されており、今後の議論に貢献するものと確信している。

 

6 ISMコードの実施

ISMコードは船舶の安全運航に係わる関係者の責任体制を確立することによって事故防止を図ろうとするソフト規制である。旅客船、タンカー、バルカーなどを対象とした第1段階は本年7月1日からスタートする。初めての本格的なソフト規制であり世界の関係者がそのスタートに注目している。5月のMSCの場でのIMO事務局長の発言では、既に78%が適合証書を取得しており、残りも7月1日の期限までに手続きを済ますであろうとの楽観的な見通しが述べられた。米国は、外国船に対し7月1日の期限までにISMステータスの事前通知を要求しており、通知のない船舶は米国の港への入港を拒否すると言明している。パリMOUは、ツー・ストライク・アンド・アウト・ポリシーを表明しており、 1回目のISM証書不所持は、他の重大な欠陥が是正されればリリースするが、 ISM証書を取得しない限り、再入港を拒否するとの方針である。我が国を含む東京MOU諸国は、文書の整備状況や船員が自らの責務に精通している等の安全管理システムの検査に重点を置いたPSCを行う予定である。なお、東京MOUでは入港の可否は各部局の判断によっており、MOUとしては入港拒否を措置の一つとして定めていない。香港は、 ISMコードに関し、パリMOUと同様の入港拒否を行うとの表明を行っている。また、パリMOUと東京MOUは、7月1日から3ヶ月間の予定でISMコードに関する集中PSCキャンペーンを同一のチェックリストで実施する予定である。

 

 

 

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