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最近のIMOの議論の動向について

 

運輸省海上技術安全局

安全基準課

 

1 基準の実施に重点

今年はIMO条約の採択50周年に当たる。IMOのこれまでの50年間の活動によって作成された船舶の安全や海洋汚染の防止に関する技術基準はかなり充実したものとなっている。しかし、便宜置籍国の中には旗国としての責任感が不十分であるか、或いは責任感や意欲はあるが十分な検査体制が整えられない旗国が多く、これが国際規則を満足しない、いわゆる「サブスタンダード船」の存在の主因となっている。従って、現在IMOでは、新規則の作成より既存の条約等の「多くの国による、かつ効果的な実施」を徹底させることが重要との認識がある。このため数年前にFSI(Flag State Implementation)小委員会を設置し、発展途上国等が確実かつ適正に条約を実施するための方策につき検討を行ってきている。

 

2 FSI小委員会の活動

FSIでは、これまでに旗国代行機関の承認に関するガイドライン、旗国代行機関の検査業務に関するガイドライン及びISMコードを作成してきた。現在、旗国の責務と要件を規定する新たなガイドライン又は条約を検討中である。併せて、旗国が自らを評価することとする自己評価制度も検討されている。

 

3 実施状況の査定

「実施」の確保に関し、注目すべき動きの一つは、本年8月1日に発効するSTCW条約の改正に基づく、いわゆる「ホワイトリスト」の作成である。これは、STCWを適正に実施しているか否かをIMOがチェックし、これに合格した国は「ホワイトリスト」に名前が挙げられることとするものである。ホワイトリストに載った国によって船員に与えられた資格証明は他の締約国でも受け入れられやすくなる効果が期待できる。現在IMOが行うチェックの手順、審査を担当する者の選定等につき最終的な調整が行われている。これまでIMOの各種条約には、条約に基づく責務を締約国が十分に果たしているか否かをチェックするシステムはPSC制度しかなかった。STCW条約では、国際機関であるIMOが、主権国家を審査するという意味でIMOの歴史始まって以来初めての制度がスタートすることになる。現在のところこの制度を他の条約に応用しようとする動きはないが、SOLAS条約等の他の条約にも適用可能であるので、STCW条約による試みの成否に注目している。

 

 

 

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