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5. 成果の活用

我国造船界は未曾有の世界的経済不安の中で苦境に立たされている。こういう時こそいかに商品価値の高い競争力のある船型を市場に提供できるかが重要な課題となる。タンカーやバルクキャリア等の中型肥形船においては航路、港湾条件により船長や吃水に制限があることから、より幅広浅吃水化が志向されている。ところがそれに伴う諸性能上の問題、載貨重量、容積等を含んだ総合的性能については検証及び評価がなされていない。

本研究会ではトータルバランスのとれた中型浅吃水肥形船の基本計画において実用上問題のない船型計画、性能評価を可能とする為の種々の研究を行なってきた。残された課題は有るが現時点での研究成果の活用について以下に述べる。

 

(1) 最新中型肥形船の船型や推進性能に関するパラメータでの解析を行ったことは今後このような肥形船型開発にあたっての有用なガイダンスとして活用が期待できる。

(2) 船型パラメータが主要性能へ及ぼす影響を知る為、本研究では既存データの外縁にコア船型を設定し、これを中心に各種船型パラメータを変化させた船型変化シリーズを計画して主要性能と船型パラメータとの関係を把握した。これらのデータは港湾条件等の制限により浅吃水を不可欠とする船型計画をする上で船型パラメータと諸性能の関係を把握する為の有用なデータとして活用できるであろう。

(3) 主要性能推定の為のツールとして利用可能な、流力理論に基づく性能推定手法による推定値と実験値を、シリーズ試験した種々船型について比較検証することは一中手造船所では不可能に近い。本研究で行なった比較検証・精度評価及び改善についての提起は理論計算により初期の諸性能推定を行う上での貴重なデータとして活用できるであろう。

(4) 本研究では載貨重要・容積、機関室配置等の船型間での比較評価を流体力学的諸性能評価と併せて行ったことに意味が有り、基本設計を行う上での総合判断データとして活用が期待できる。

(5) 船型の総合性能評価を行う為、本研究では運航経済性、安全性、品質について評価指標を提起し、総合評価を行った。評価指標についてはその重みづけ等に課題が残るが評価手法としては十分活用出来るものであり、造船所・海運会社で船型を評価する上でのツールとして活用が期待できる。

(6) 既存船実積を大きく超えた幅/吃水比の船型において実用可能な性能を得たことは、今後更なる超浅吃水化を研究する上で有用なデータとして活用が期待できる。

以上の様に本研究成果は中型浅吃水肥形船を計画する上での必要なデータを網羅しており、総合性能に優れた船型を市場に提供する上でのツールとして大いに役立って行き、我が国造船・海運界の国際競争強化に大きく貢献して行くことであろう。

 

 

 

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