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以上のように、ELISA法による寄生虫特異的抗体検査の陽性者は、中間宿主貝の生息地付近に特に多く分布する傾向が明らかとなった。このことは、血清疫学調査の結果から中間宿主貝コロニーの所在を推定し得ることを示しており、事実、我々はこのようにして新たな中間宿主貝コロニーを発見することが出来た。これは、貝によって媒介されるという特徴を持つ本寄生虫症における、血清疫学調査の効用の1つと言える。この例にとどまらず、これまでに作製してきたスケッチマップは、調査地域内の日本住血吸虫症の疫学を把握するうえで非常に有用な情報を与えてくれる。今後の活動の中で本症コントロール対策を実施してゆく際にも、充分に活用してゆきたい。

しかし一方では、調査開始当初の検査結果は、既に現在の状況とかけ離れつつあることが懸念される。第2版目のスケッチマップ作製に着手するなどして、絶えず変化している本症浸淫状況を正確に評価するよう努めていきたい。

 

4. フィリピン・オリエンタルミンドロ州における降水量

 

我々の調査地域に程近いナウハン湖には、四方からの水流が注ぎ込んでいるにも関わらず、そのはけ口となる川は1本のみである。従って、ナウハン湖周辺地域は年間を通して湿地帯となっており、中間宿主貝Oncomelania quadrasiにとって好適な生息環境となっている。しかも、雨季には河川の氾濫も加わって周辺一帯が水に浸かってしまうこともある。

本年度の調査では、オリエンタルミンドロ州における降水量を調べるために、州都カラパンの測候所を訪ね、1990年以降の月別降水量を知ることが出来た(表3)。

 

表3 オリエンタルミンドロ州・カラパンにおける月別降水量(1990年〜)

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