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それで120デシベルでした。今考えると情報の量が少なかったために音の変化が捉えられなかったと思います。

補聴器ではどれだけ苦労しても聞こえなかったと思います。人工内耳手術を受けた後京大で測定したところ40dBでした。低音から高音までムラなく聞こえますので、今までのような「ピッ」という聞こえ方ではなく、インターホンでもピンポーンとリズミカルに余韻も聞こえます。

踏切の警報機のチリンチリンという音が100mくらい手前から、風の都合にもよりますが聞こえてきます。救急車のピーポーピーポーという音も、まだ、車が見えないところからでも聞こえてきます。ただ、そういう場合に方向が分かりにくいので、どこから聞こえてくるのか、キョロキョロするという点がありますがそういう音の情報が届くという点では、ほとんど健康な人と同じくらい頭に入ってくるというふうに思っています。

以前は難聴だったから、聞こえない人にとって、インターホンはバリアだと思っていました。入口で押し続けているので、中の人が怒って出てくる方もありました。それで、こちらが難聴であることが分かると理解していただけたのですけど。

今は、インターホンを押しますとどう聞こえますかというと、中で「ピンポーン」呼び出している音が聞こえる、出ると、「どなたですか」という声が聞こえます。だから、音そのものは非常に良いと思っています。さきほど、50〜60デシベルとおっしゃってましたが、私の知っている殆どの人は生活音とか環境音は非常によく聞こえています。で話が聞こえているかというと、これが非常に微妙で、聞こえますか?と問われると聞こえると言えるし、時々は良く聞こえることに驚いて、どんなに聞こえるのですか?と聞かれこともあります。ところが、非常によく聞こえる場合と聞こえない場合がある。一般的には、人工内耳を着けた人は、複数の人、3,4人が話している場合は理解力が、がたっと落ちる。これは、人工内耳の説明のところで、述べておられますけれども、人工内耳というものがフォルマントを捉える形で脳に母音を認識させている。そういう説を考えますと、たくさんの人が話している場合は、フォルマントが崩れているのではないか、電気信号が崩れているのではないかと思う。それから、TVを見ている場合多くの人はニュースは聞こえる、ドラマには背景で音楽があったり、いろんな沢山の音が入っているので聞きにくくなっていると言っている方があります。もう1つは、口の形をみながら、あるいは顔をみながら、話をすると、ほぼ100%聞こえる。それから、磁気ループが、よい性能の磁気ループが入っていると、磁気ループを通しますと、これもほぼ100%聞こえる。人工内耳を着けている方が言われるのですけれど、普通の話よりも、携帯電話や電話のほうが聞こえる。これはやはり、電話も磁気ループと同じように、必要な音だけが脳に届くせいではないかと思っています。

連合野という話を聞きましたが、この言葉のニュアンスからいっていろいろな情報、視覚的情報、音の情報、それを判断する脳の機能が、それが結び付ける機能が、聞こえに影響していると思う。同じ音であってもある程度イメージに結びつきやすい音はよく聞こえて来るわけです。例えば銀行で今までは窓口をみていないと呼ばれても分からなかったですけれど、週刊誌を見ていても名前を呼ばれれば分かるんです。近くの駅では駅の放送で急行電車が到着しますとか、列車が通過しますとか停車駅はどこですとか、いう案内がきちんと聞こえてくるわけです。ああいうやかましい騒音の中で、聞こえるということは、脳の中のイメージを司る部分がうまく働くからだと思います。

 

 

 

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