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中国船社や台湾船社においては、投入船舶の拡大・航路の増設は、中国や南アジアなどの寄港地拡大に向けられており、日本側の寄港地については、既存の航路体系の中で途中寄港地の追加を検討するということが基本となっている。

こうしたことから、既存航路から近接した立地条件にあり、寄港地追加に伴う航路距離の増加が最小限にとどまることが、航路開設に当たって有利な条件となっている。

 

(5)九州の港湾、特に長崎港における航路開設意向と求められる条件

 

1]貨物量の確保とベースカーゴの存在

 

基本的には、航路開設の第一条件である貨物量の確保が見込まれることが重要である。このため、北九州港や博多港については、特に中国船社から今後も航路開設の可能性があるとの認識が示された。

一方、長崎港については、大分、細島、志布志各港と比較しても、背後圏に大手荷主の立地が少ないという意見が示された。また、そのような大手荷主としては、直背後に立地する電機メーカーが有望であろうとの意見も示されたが、韓国船社によれば、北米向け貨物が中心であるため、釜山トランシップとするとコスト競争力を発揮しにくいとされる。また、空コンテナの回送費用もネックとなる。

また、長崎港の海貨業者からは、新たなベースカーゴとして、海産物の輸出入を拡大すべきとのアイディアが提案された。長崎港は全国2位の水揚げを誇るので、それに見合う全国の(あるいは海外も含めた)販路を持っているはずであり、販路があるということは、長崎経由でモノを動かすことができるということなので、地場の貨物以外の貨物を取り込むとすれば、海産物しかない、との考え方である。このためには、現状では漁船から直接水揚げしている海産物の取扱いを輸出や輸入にも拡大していくことが求められる。

 

2]近隣港湾との関係

 

長崎港は、近隣に伊万里港があるため、伊万里港に航路を有する韓国船社からは、長崎港への延航には慎重にならざるを得ないとの認識が示された。別の韓国船社によれば、伊万里港との競合関係が問題となるが、熊本港や瀬戸内海などとの組み合わせにより、航路開設の可能性もあるとされる。ただし、伊万里港や博多港に対して競争力を持てるかどうかがポイントとなる。

この点に関連して、長崎港の海貨業者からは、船社に集荷インセンティブを働かせるため、九州に寄港していない船社をターゲットとするべきであるとの意見が示されている。

長崎港と熊本港の組み合わせによる航路開設については、熊本は大手荷主が多く立地することから、熊本港整備の完成後の航路開設の可能性が期待されている。なお、組み合わせの対象としては八代港も選択肢としてあげられている。

 

 

 

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