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加と、この中にいる低所得老人世帯の生計問題、2]老人1人世帯の急速な増加と、このうち介護を要する老人に対する家庭奉仕員(ホームヘルパー)制度の組織化ならびに派遣問題、そして3]定年退職による社会的役割の喪失と家庭内での役割もない男子老人の生きがい問題(余暇利用)などが、主な老人問題として台頭している。

 

3. 政府の老人福祉対策

 

1. 老人福祉政策の方向

 

政府の老人福祉政策は、1991年に制定された老人福祉法(1997年7月改正)に明示される「敬老と老人の生活安定」、「能力に準じた社会活動」、「健全な心身の維持と社会発展への寄与」という基本理念に基づき、1]敬老孝親と美風良俗に沿う健全な家族制度の維持発展と、2]老人福祉の国家並びに地方自治体の責任という、二つの命題に従って展開することを明らかにしている。このような基本的な「わく」の下で対策の責任部局である保健福祉部は、老人福祉施策の方向を従来の生活保護老人中心の福祉事業から老人全体を対象とする事業に拡大するとともに、「健康で活気溢れる老後生活の保障」という目標の下に、1]生活安定基盤の造成、2]健康な老後生活、3]尊敬されながら活動する老人像の確立などの具体的な対策を講じている。

生活安定の基盤づくりでは、1]老人の所得保障強化を図っており、具体的には敬老年金の支給、老人就業斡旋センターの支援、老人共同作業場の設置拡大などを進めている。2]要保護老人の問題と関連しては、従来の施設保護中心の事業から地域及び家庭中心の福祉体系への転換を図りながら、さしあたり老人福祉施設の拡充と運営費の支援、「老人の家」と敬老食堂の運営費支援、1人老人世帯(独居老人)の介護などの対策を講じている。

健康な老後生活のためには、1]医療サービスの拡充、2]痴ほう老人事業の強化、3]在家老人福祉事業の拡充などを期している。1]医療サービスでは、特に老人健康診断の徹底を期しており、2]痴ほう老人事業の強化対策では、老人人口の約4〜5%と推定される10万人に上る痴ほう老

 

※「老人の家」は、低所得生活保護対象老人3〜7名を一つの住宅に起居させて、共同炊事や共同暖房による経費節減と月貰負担を解消させるとともに、寂しさを分かち合うなど低所得老人の実質的な福祉水準を高める為のものである。

 

 

 

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