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韓国では1997年現在、171カ所の施設を9,300人の高齢者が利用している。統計的資料の比較をしてみても、韓国の施設不足を実感せざるを得ない。例えば、ソウル中心部にある公園(Pagoda Park)などが高齢層のたまり場となっているのは、福祉施設の不足を示唆する一面と言えよう。最近になって民間団体による施設への支援が増加してはいるものの、まだ初期段階と思われる。

台湾の場合、以前軍の収容所であった施設の活用及び新たな施設の拡充をはかっている。中国の上海市の場合は、都市社会のインフラ部門(基礎部門)の整備とともに海外の華僑団体による施設支援が活性化していることが観察された。とくに中国大陸の文化の特徴として見受けられるのは、高齢者集団を中心として自発的に行われている早朝の体操運動があらゆる地域において広く普及されることである。

西欧的な思考の影響(Western Impact)と伝統的な家族意識が未だに共存している韓国社会では、去年の冬の寒波とともに襲ってきた経済危機を体験しながら、高齢者をめぐる家族や社会の意識は、今後どのように変わっていくか、その変化は注目に値するところである。なぜならば、この頃マスコミの報道では、最近の若い世代において、これまで普遍的に見られていた分家志向から親との同居を望む方向へと回帰する傾向が見られるという調査結果が取り上げられたりもするからである。その原因がどこにあるにせよ、高齢期においては家庭保護が望ましいものと考える。国家予算の中で高齢者福祉に割り当てられる予算は、韓国0.5%、台湾1.5%、日本3%とされている。韓国では、1997年の老人福祉法の修正を契機に、老齢手当(敬老年金)の導入が試みられたが、経済危機の影響のため部分的実施に止まっている。国民が望む構造改革による経済回復とともに、共に生きていく福祉社会の実現を期待する次第である。

 

<参考文献>

1. World Urbanization Prospects ;1997,1996 Revision U.N. Secretariat, Population Division, New York

2. 韓国保健社会研究院、1994『老人生活実態調査分析及び政策課題』

3. 日本総務庁老人対策室、1993『長寿社会対策の動向及び課題』

4. エイジング総合研究センター、1996『“韓国の高齢化”研究報告書』

5. 総務庁、1996『将来人口推計』

6. 韓国人口学会、1997『人口変化とQuality of Life』

7. 統計庁、1997『韓国の人口構造の変化と社会政策的課題』

8. 韓国保健社会研究院、1998.3『Health and Welfare Policy Forum』

9. Ministry of Health and Welfare ; 1997, Programs for health and Social Welfare Policies

 

 

 

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