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は老齢手当の面では、都市2.8%、郡部4.5%と、年金などに恵まれている層の場合とは逆の現象を見せており、都市と郡部の間に相反する傾向を見せている。高齢者の収入源の大部分が年金である先進国の状況とは対照的と言えよう。韓国の国民年金制度は1988年にスタートしており、20年後にあたる2008年にいたってようやく年金の受給者が相当な割合まで増加すると予想される。

老後の生活について、高齢者自身が感じている現在の経済状態に対する回答を見る限り、地域別に大きな格差は見られないが、都市では50%、郡部では60%が経済的に困難であると感じていることがわかる。経済的に困らないと回答した高齢者は都市と郡部ともに20%にも満たない。大部分の高齢者が自立できず依存的な生活を送っているという現実は、高齢者福祉の次元で社会的支援政策を強化すべきであることを端的に示唆しているものと考える。

 

4. おわりに

 

韓国は1960〜80年代を通じて労働集約的な輸出産業から技術集約的な工業化への経済発展とともに、急速な都市化及び産児調節策の成功が功を奏し人口転換を成し遂げた。しかしながらその一方においては、経済成長一辺倒の政策、または高い軍事費の維持、社会文化的な家族意識への依存など、複合要因に足を取られ、来るべき高齢化社会への準備は適切なレベルまで達せられずにいるのが現状である。

60歳以上の高齢者が都市では7%、農村では18%に達している現実を考慮すると、政府による社会的な支援政策の強化は急を要する課題であり、少子化による人口高齢化及び平均寿命の延びによって、いわゆるライフサイクル上の「空の巣期間(Empty Nest Period)」が長期化する長寿社会の到来は目前に迫っている。

本稿は、主に、人口学的な側面からみた地域別人口高齢化について検討したものである。高齢者福祉の様々な分野のなかで、筆者がここ数年間に経験した東北アジア地域における高齢者福祉施設についての感想は次のようなものである。

日本は経済的にも優位な立場に位置しているが、人口高齢化が他の国より先に到来したため、種々の関連施設を拡充しつつある。1993年現在、3,600カ所の老人ホームを25万人の高齢者が利用している。

 

 

 

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